ロボットは家族の一員になり得る? 研究者が語る「1家に1台」普及の未来像

AI要約

ユカイ工学は、自由闊達なものづくりを通してユーザーに楽しさやワクワクを提供するロボティクスベンチャーである。

組織内で誰もがアイデアを提案し、試作品を作ることができる環境を整備し、革新的な製品開発を推進している。

製品の真の価値は触れてみないとわからないため、実際に試作品を作り、検証している。

ロボットは家族の一員になり得る? 研究者が語る「1家に1台」普及の未来像

人に共感する未来のファミリーロボット「BOCCO emo」(ボッコ エモ)、しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo」(クーボ)、やみつき体感ロボット「甘噛みハムハム」など、ユニークなロボットを次々に開発、販売しているロボティクスベンチャー、ユカイ工学。

生み出す製品はいずれも、社名の通りユーザーをワクワク愉快にさせ、メディアの注目を集めている。「ロボティクスで、世界をユカイに。」をビジョンに掲げて取り組むものづくりについて、創業者でCEOの青木俊介氏が語る。

取材・構成:長尾 梓 写真撮影:にったゆり 写真提供:ユカイ工学

※本稿は『[実践]理念経営Labo 2023 SUMMER 7-9』より、内容を抜粋・編集したものです。

自分たちが自由闊達にものづくりをできる場をつくりたい ――。ユカイ工学設立の背景には、そんな想いがありました。エンジニアというのは、基本的にみんなものづくりが好きな人たちです。

しかし、実際に自分のアイデアを思ったように形にする機会に恵まれている人は、そう多くないでしょう。組織が大きくなればなるほど個人のアイデアは生かされにくくなりますし、お客様の注文を受けて開発するとなると、たいていの場合、裁量の余地はほとんどありません。

本来の楽しさ、ワクワク感にあふれたものづくりをどこまでも追求したい――。当社は従業員数約30名の組織ですが、心からそう願っているメンバーが結集しています。

社名の「ユカイ」は、ソニー創業者の井深大氏が起草した同社設立趣意書の一節「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という考え方に共感してあやかりました。自由闊達にアイデアを出して形にできる組織と企業風土をつくり、「ユカイ」なものづくりを通して世界中のユーザーにも楽しさやワクワクを感じてもらうことが、当社の目指すところなのです。

「ユカイ」な組織であるために、当社ではエンジニアやデザイナーはもちろん、営業やPR、人事、経理のスタッフまで、誰もが自分の企画を提案できるようにしています。それもただ単に企画書として提出するのではなく、各々がまず試作品をつくってみます。

というのも、いい企画を生み出すことに立場はまったく関係ありませんし、いろいろなアイデアがあったほうが「ユカイ」なものづくりにつながるはずです。

また、製品が持つ本当の価値というのは、実際に形にして触れてみないとわからないものです。たとえばセラピーロボットの「Qoobo」は言ってみれば「動くしっぽの生えたクッション」ですが、企画書でいくら説明されても、それのどこが「ユカイ」なのか、いまひとつピンときませんよね。でも、実際に撫でて、しっぽが振れる様を目にすると、驚きや発見が生まれてきます。

もちろん、商品化まで至らないケースも数多くありますが、どんなアイデアでも検証する価値はあるはずです。たとえ一度ボツになったとしても、時を経て新たな可能性が生まれてくることもあるので、アイデアはすべてわれわれの財産であると考えています。