VivaTech 2024に見る大企業とスタートアップの距離感

AI要約

2016年に始まったViva Technologyは、大企業とスタートアップの関係が変化してきたイベントである。

2024年のViva Technologyでは、主要フランス大企業の展示ブースを振り返ると、OrangeやBNPパリバ、AXAなどが積極的にスタートアップとの協業を展開している様子が伺える。

各企業の展示内容やメッセージ、展示の傾向などが年々変化し、注目される出展も見受けられた。

VivaTech 2024に見る大企業とスタートアップの距離感

世界最大級のオープンイノベーションのイベント、Viva Technology。イベントが始まった2016年の段階では、大企業は主役ではなく、あくまで場をオーガナイズすることに徹し、スタートアップが主役だった。その後、回を重ねるごとに大企業とスタートアップの展示のバランスや関係は変化してきた。2024年はどのような雰囲気であったのか、主要なフランス大企業のブースを中心に振り返ってみたい。

 世界最大級のオープンイノベーションのイベント、Viva Technology。このイベントが開始された2016年の段階では、主役は大企業ではなく、大企業はあくまでも場をオーガナイズすることに徹し、スタートアップ主体のイベントとして始まった。

 

 その後、回を重ねるごとに大企業とスタートアップの展示のバランスや関係はイベント内で変化してきたが、2024年はどのような雰囲気であったかを主要フランス大企業のブースを中心に振り返ってみたい。

 

Orange

 Orangeは、フランス最大の通信キャリアであり、欧州やアフリカなど数十ヵ国で通信事業を展開している。Viva Technologyが始まる前からスタートアップとの共創に積極的に取り組んでおり、初回から何十ものスタートアップが展示するミニブースをブース内に広く配置し続けている。

 

 また、2024年はパリで五輪が開催されることもあり、エッフェル塔とその前に仮設されるビーチバレーのスタジアムのミニチュアがブロックで再現されていた。

 

BNPパリバ

 こちらも世界有数の金融機関であるBNPパリバ。テニス好きであれば、毎年フレンチオープンのスポンサーとなっている企業としてご存知の方も多いのではないだろうか。

 

 業界をリードする大企業としてフィンテック関連のスタートアップの展示などが中心だが、展示ブースにおけるスタートアップ関連の割合は、近年若干減少傾向にあった。しかし2024年は、表にSTARTUPSという表示を大々的に掲げ、スタートアップとの協業やイノベーションへの取り組みを再び押し出してきているように感じさせる展示となっていた。余談だが、一昨年のViva TechnologyでのBNPパリバブースのメインメッセージは「Women + Girls in Tech」であった。

 

AXA

 日本でもアクサダイレクトのCMでおなじみのアクサも実はフランスを拠点とするアクサグループの子会社。ただ、フィンテックと同様に、保険関係もスタートアップの展示においては派手なハードウェアなどを伴うことは少なく、どうしても地味な印象になってしまいがちだ。それも関係してか、一昨年はほぼイベントと商談ブースのみ、昨年はブースがみられない状態となっていた。

 

 今年は、アクサはウェルビーイングとスポーツ系の展示コーナーのスポンサーとなっていた。アクサは生命保険事業があるため、ウェルビーイングは親和性が高いところであり、来場者の注目も集めやすい。2024年のViva Technologyでは奇妙なことに4社くらい、別々にスマートサンドバッグの展示がみられたが(圧力検知関連でサンドバック向きの良いセンサーが最近リリースされたりしたのかもしれない)、ここで展示されていたものがもっとも完成度が高く人気となっていた。

 

La Poste

 フランスの郵政公社、La Posteもスタートアップとの協業に以前から力を入れており、CESでも積極的に展示を行なっている。

 

 ブースで見られた、スタートアップを資金サポートしインキュベートする、という力強いメッセージ。

 

 こちらでは配送倉庫の荷捌きのオートメーションの様子を再現したレゴブロックが圧巻だった。

 

Airbus

 エアバスは初回のViva Technologyから出展していたが、その後、出展をやめたりもしている。去年は出展していなかったが、2024年は出展を行なっていた。

 

 エアバスは、本社が所在するツールーズにもスタートアップや研究機関との共創ラボがあるなどオープンイノベーションに長らく取り組んできている会社だ。しかし、2024年の展示ではスタートアップ関連の展示はなく、航空機向けの電動プロペラエンジンなどの展示を中心とした地味な展示となっていた。ライバル会社であるボーイングが品質問題で苦しんでいることもあってエアバスの業績は絶好調ということもあり、あえてこうした展示会に積極的に取り組む必要がないということかもしれない。

 

Crdedit Agricolle

 もともとはフランスの農家の資金調達ニーズに答えるため創業したのが、クレディ・アグリコル。英訳ではCredit Agriculture、いわば農協のような立ち位置であったが、現在はフランス最大の個人向け金融機関であり、フランス各地に拠点がある。そのためスタートアップをはじめとする中小企業支援にも積極的で、日本での信用金庫のような性質を持つ。

 

 2024年のViva Technologyでは、JAアクセラレータプログラムなどを行う日本のAg Venture Labがフードテックとも関わりが深いということもあり、このクレディ・アグリコルブースで展示を行なっていた。

 

 クレディ・アグリゴルはフランス各地に36カ所のインキュベーション拠点があるほか、イタリア、ルクセンブルク、カリブ海などフランスの海外領土にも8つの拠点があり、3000社のスタートアップが活動している。今後、日本においても非常に参考となる会社のうちのひとつだろう。

 

文● 美谷広海(FutuRocket)  編集●ASCII STARTUP