恐るべき「偽造ワイン」の世界。ヤフオクの多くは偽物、被害総額120億円の偽造犯も

AI要約

世界的な需要や円安によりファインワインが高騰する中、偽造ワインが問題となっている。

偽物が二次市場で氾濫し、DRCなど高級ワインすら偽物が出回っている。

過去の偽造ワイン事件や手口から、偽物ワインの見極めが重要である。

恐るべき「偽造ワイン」の世界。ヤフオクの多くは偽物、被害総額120億円の偽造犯も

世界的な需要や円安によりブルゴーニュをはじめファインワインがますます高騰するなか、近年、問題となっているのが偽造ワインだ。ヤフオク!など二次市場には偽物が氾濫し、偽ワインの元となりうる空き瓶まで高値で売られているありさまだ。ネット市場だけでなく、都内の高級デパートの店頭で売られていたDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)がすべて偽物だったというから、驚きを禁じ得ない。

高いお金を出して偽物をつかまされないためには、どうすればいいのだろうか。国内オークションハウス「TOP LOT」のアドバイザーを務める真贋鑑定のプロであり、ワイン業界の第一人者である堀賢一氏に、偽物ワインの現状とその見極め方について伺った。

■被害総額120億円! 史上最悪の偽造ワイン犯

偽造ワインといえば、米国で初めて偽造ワイン犯としてとらえられたルディ・クルニアワンの一件が記憶に新しい。その一連の偽造事件は、「Sour Grape」というドキュメンタリー映画にもなっている。

主人公は、2000年代初めからニューヨークのワインオークションに現れたインドネシア人のルディ。次々に高額ワインを落札・出品を繰り返し、有名ワインコレクターとしてワイン社交界でも名を馳せていた。

偽造の疑いが発覚したのは、ブルゴーニュの生産者ドメーヌ・ポンソのワインがきっかけだ。ポンソの「クロ・サン・ドニ」1945年~71年のヴァーティカルロットを出品したルディに対し、ポンソの当主が「1982年がファースト・ヴィンテージで、出品されたヴィンテージは存在しない」と申告。その後、ルディのワインを落札したアメリカの大富豪が、ワインの真贋に対して訴えを起こし、FBIの調査により偽造が発覚した。

ルディの偽造ワインの被害総額は120億円といわれ、今なお偽造ワインは回収しきれずに市場に出回っているといわれる。しかも偽造ワインの中身には、チリやカリフォルニアワインにポートワインをブレンドしたり、ハーブや醤油で味を調え、澱に見せかけコーヒーの粉を封入したりと、工夫を凝らして本物に似せていたというから驚きだ。

ちなみにルディは2014年にアメリカで懲役10年の判決を受けたが、2020年に釈放され、母国のインドネシアに戻ったという。現在は、富裕層のワインコレクターから引き出した本物の高級ワインと、自身の偽造ワインを飲み比べるイベントを開催(しかも偽造ワインを好むゲストが多いのだとか)しているというから、そのたわしの心臓には驚かされる。