トヨタ子会社が下請法違反 「金型保管の強要」はなぜタチが悪いのか? “取引慣行”はもはや許されない時代に

AI要約

2024年7月5日に公正取引委員会はトヨタ自動車の子会社であるトヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD、横浜市)に対して下請法違反について勧告した。その内容は、自動車用部品の製造用金型の保管に関するものだった。

金型とは金属部品や樹脂部品、ゴム部品などの製造に使用する素材成形用の型で、プレス加工や鋳造、樹脂やゴム部品の形状を決定するものだ。自動車用部品の製造は大量生産が基本となるため効率的に部品を生産する必要があり、金型によって同一形状の部品を高い精度で生産できる。

またそのほかにも下請けが製造した製品に瑕疵(かし)があるとして不当に返品させたことも発覚しており、不当な返品の禁止や金型の保管で不利益を与えないようにと定めた下請法に抵触する。その被害額は計数千万円にも上っており、親会社による下請けいじめの一端が発覚した。

トヨタ子会社が下請法違反 「金型保管の強要」はなぜタチが悪いのか? “取引慣行”はもはや許されない時代に

 2024年7月5日に公正取引委員会はトヨタ自動車の子会社であるトヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD、横浜市)に対して下請法違反について勧告した。その内容は、自動車用部品の製造用金型の保管に関するものだった。

 金型とは金属部品や樹脂部品、ゴム部品などの製造に使用する素材成形用の型で、プレス加工や鋳造、樹脂やゴム部品の形状を決定するものだ。自動車用部品の製造は大量生産が基本となるため効率的に部品を生産する必要があり、金型によって同一形状の部品を高い精度で生産できる。

 この金型は部品の生産終了後にも一定期間保管する必要があるのだが、トヨタ系列子会社は車のバンパーなどの金型664個などを下請け約50社に無償で保管させたことが問題となった。

 またそのほかにも下請けが製造した製品に瑕疵(かし)があるとして不当に返品させたことも発覚しており、不当な返品の禁止や金型の保管で不利益を与えないようにと定めた下請法に抵触する。その被害額は計数千万円にも上っており、親会社による下請けいじめの一端が発覚した。

 金型保管に関する下請法違反の実態はトヨタだけでなく、2024年に入ってトヨタを含めると3件もの大規模な違反が判明している。2月には自動車用コンプレッサーなどを手がけるサンデン(群馬県伊勢崎市)が、下請け61社に対して計4220個もの金型の無償保管を強要しており、被害額も総額では億の単位になるようだ。

 また3月にはモーターや自動車用部品を手がけるニデックの子会社であるニデックテクノモータ(京都市)が、下請けに対して計600個の金型を無償保管させていたと発覚し、さらに金型の現状確認のための棚卸しなども強要させていた。

 日本を代表する自動車メーカーや部品メーカーの大規模な不正発覚により、製造業の実態が白日のもとにさらされた。

 金型は部品の製造時に主に使用するものだが、アフターパーツの供給のために製造終了後も長期保管が必要となる。

 金型は部品の形状を正確に製造するためのものであり、金属の塊から削り出しなどで制作される。その大きさは製品サイズや一度に製造する部品の個数によって変わってくるが、自動車用部品の金型は大きなものがほとんどだ。1台の自動車には

「3万点」

に上る大量の構成部品があるが、その部品に使われるパーツなども含めると金型で製造される部品は膨大で、金型自体の数も当然多くなる。また金型の精度や状態が部品のクオリティーを直接左右するため、必要最小限の金型の数に抑えるために替えが聞かないものでもある。

 自動車部品の製造は車種ごとに生産台数に合わせた計画個数があり、その製造が完了すれば金型の役割はひとまず完了する。だが機械製品は後々の修理や部品交換などを行う場合があり、特に車は10年以上も使用されることが多いため、それらに使用するアフターパーツの製造のために金型を数年間はどこかに保管しておかなければならない。

 もし金型を廃棄してしまうと部品の再生産のために新規で金型を作成しなくてはならないが、莫大(ばくだい)な作成コストと部品価格の上昇を招くばかりか、金型が変わったことで精度などの部分で問題が起こりかねない。そういった理由から部品製造後にも金型は保管を義務付けられている場合が多いが、法定耐用年数は

「2年」

と定められている。だが中小企業庁の資料「平成30年度金型に係る取引の調査結果」(2020年3月発表)によると自動車製造業における金型の保管期間は4年超が8割以上を占めるが、驚くべきは

「10年、20年も保管している事例が全体の半数」

を占めており、法定耐用年数を大きく上回っているようだ。こういった状況のなかで金型の長期保管は製造業の大きな課題になっており、今回のように下請けに押し付けるような問題が発生することになった。