旧ビッグモーターとの保険取引をめぐって伊藤忠商事の高圧的な姿勢が大手損保各社の不興を買っている

AI要約

損害保険大手と伊藤忠商事などの連合が保険取引で対立している状況について

大手損保各社が自動車管理者賠償責任保険の引き受けを謝絶した背景とその影響

伊藤忠が大手損保に再度引き受けを求めたが、状況は複雑化している

旧ビッグモーターとの保険取引をめぐって伊藤忠商事の高圧的な姿勢が大手損保各社の不興を買っている

 「保険を引き受けて当然だろ、というような高圧的な印象を受けた。あの人たちは、われわれの現状をまったく理解していない」。損害保険大手のある役員は、そう言って深いため息をつく。この役員が言う「あの人たち」とは、伊藤忠商事のことだ。

 さらに、ここで言う「保険」とは、伊藤忠商事と子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社が共同出資によって発足させた、ウィーカーズ(旧ビッグモーター)との保険取引を指している。

 伊藤忠などの3社連合は、ビッグモーターとその子会社の全事業を会社分割のかたちで承継し、ウィーカーズとして5月に発足。経営再建に向けて、事業基盤を整えるため、店舗の火災保険といった管財保険の手配を進めていた。

■「自管賠については時期尚早であり論外」

 一方で、大手損保各社は管財保険の引き受けについては慎重な姿勢だった。中でも、「自管賠(自動車管理者賠償責任保険)については、はっきり言って時期尚早であり論外だった」と同役員は話す。

 それもそのはず。自管賠とは、顧客から修理などで預かった自動車を損壊させるなどした場合に、その賠償費用を補償する保険のこと。ビッグモーターはその自管賠を悪用し、賠償費用を保険会社に不正に請求していた疑いがある。

 そうしたコンプライアンス体制の課題が、社風も含めて払拭されたかはっきりしていない段階で、社名と経営主体が変わったからといって、おいそれと自管賠を引き受けるわけにはいかなかったわけだ。

 結局、大手各社が軒並み自管賠の取引を謝絶したことで、中堅のAIG損害保険が契約を引き受けることとなった。

 ただ、伊藤忠側としては引き受け手が1社だけとなり、保険料が高くなる状況を避けたかった。そのため6月以降、大手損保各社に改めて引き受けについて相談したが、その交渉姿勢をめぐって、大手損保の不興を買ってしまった。

 契約交渉にあたって、伊藤忠が提示した書類には、①ビッグモーターの借金や不正請求の弁済といった債務を引き継いだBALM(バーム)と、事業を引き継いだウィーカーズは別会社であること、②伊藤忠で法務担当の役員を務めた人物をウィーカーズに派遣し、徹底した法令順守を敷いていること、③将来のグループ会社化を見据えて、伊藤忠が経営に深く関与する方針であること、が記されている。