日本の鉄道事業は大丈夫か…2040年頃に「通勤・通学定期券客が2割減」の大きな衝撃

AI要約

将来の日本の人口減少に伴う影響について解説されている。鉄道事業も大きな危機に直面しており、特に通勤路線の運賃収入が減少する可能性が高い。

若い世代の減少が特に顕著であり、15年後の通学定期券客や勤労世代の通勤定期券客は現在よりも2割程度減少する見込み。

人口減少に対応するため、鉄道業界を含む各産業が将来に向けて変革する必要があることが示唆されている。

日本の鉄道事業は大丈夫か…2040年頃に「通勤・通学定期券客が2割減」の大きな衝撃

国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

2022年は、鉄道開業150年の節目の年であった。新橋―横浜間29キロを蒸気機関車が初めて走ったのは1872年10月14日のことだ。以来、鉄道は日本経済および日本人の暮らしの向上に大きく寄与してきたが、人口減少は鉄道事業を開業以来最大の危機に追い詰めつつある。

東京圏や大阪圏を走る通勤路線も決して安泰ではない。大都市圏も人口が減少局面に転じ始めている。東京都総務局統計部の推計によれば、東京都の人口も2025年に1422万5363人でピークを迎える。運賃収入の永続的な減少は避けられそうにない。

少子化の加速で若い世代ほど減り方が速いことを考えれば、影響が真っ先に表れるのは子供向け運賃収入や通学定期券収入となる。

通学定期券客の該当世代がどれくらい減るかは、年齢別人口を比較すれば概(おおむ)ね見通せる。東京都で見てみよう。

都総務局統計部の「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」(2022年1月1日現在)によれば、高校生や大学生の大半が該当する15~24歳は129万6818人だ。これに対し、「15年後の15~24歳」にあたる0~9歳は105万377人なので19.0%少ない。

この年齢層の人々がすべて電車通学となるわけではないが、単純に考えれば15年後の通学定期券客は現在より約2割少ない水準となるということだ。

運賃収入の主柱である通勤定期券客の減少幅も大きい。

総務省の人口推計(2021年10月1日現在)によれば、勤労世代である20~64歳は6892万4000人だ。0~44歳は5508万9000人なので「20年後の勤労世代」も現在より2割減る。

むろん全員が大都市圏の通勤定期券客とはならないが、人々の行動パターンがこれまでと大きく変化しなければ2040年には通学定期券客と同じく2割近くは減ることになる。