消費増税が大きな転機に 日銀執行部は楽観論も目標達成に暗雲 金融政策決定会合議事録

AI要約

日銀は消費税増税後の個人消費と物価の影響について楽観的だったが、実際には暗雲が広がり、金融緩和を追加することになった。

一部の議員は消費増税による反動減に警戒し、物価の先行きに慎重な見解を示していた。

黒田総裁らは2%の物価安定目標の達成に向けて強気の姿勢を崩さず、もともとの楽観的な見方を続けていた。

消費増税が大きな転機に 日銀執行部は楽観論も目標達成に暗雲 金融政策決定会合議事録

日銀が16日公表した平成26年1~6月の金融政策決定会合の議事録からは、同年4月の消費税増税の個人消費への影響を巡り、「想定の範囲内」と楽観的な見方をしていた様子が伺える。しかし、実際には消費税増税以降、2%の物価安定目標の達成には暗雲が垂れこめ、日銀は10月に追加の金融緩和に追い込まれることになる。

■大規模な反動減指摘も

「マクロ統計でみる限りは相当大規模な(駆け込み消費の)反動減が生じている」。6月12、13日の会合で、佐藤健裕審議委員は消費増税の影響をこう指摘した。木内登英審議委員も反動減の大きさに警戒感を示していた。ただ、景気の先行きに慎重な佐藤、木内両氏は当時の政策委員9人の中では少数派だった。

黒田東彦総裁らは「消費税率引き上げ以降も物価の基調に変化はない」などと強調。増税による個人消費や物価への影響は限定的とみていた。

4月の消費者物価(生鮮食品除く)は消費税増税の影響を除き、前年同月比1・4%まで上昇。大規模金融緩和の導入から1年で物価上昇率が1%台半ばに達したことで、自信を深めている姿が浮かぶ。

■物価目標達成でも強気

2年程度で2%の物価安定目標の達成を目指す強気の姿勢も崩さなかった。

今後3年間の経済・物価の見通しを議論した4月30日の会合では、黒田氏が「見通し期間の中盤ごろに2%程度に達する可能性が高い」と総括。27年度と28年度の物価上昇率をそれぞれ前年度比1・9%、2・1%とする案を示した。

これに対し、木内氏は「円安の効果が徐々に剝落していく可能性が高い」と反発。佐藤氏と白井さゆり審議委員も2年程度での目標達成を疑問視し、黒田氏の案に反対した。

3人が反対する一方で、緩和推進派の岩田規久男副総裁は「(目標達成の)確実性はむしろ高まっている」と強調。中曽宏副総裁らとともに黒田氏の案に賛同した。

だがこの後、円安による物価押し上げ効果の一巡や原油価格急落により、国内物価は下落に転じる。

現在、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストを務める木内氏は10年前の議論を振り返る。

「事務方も含めた日銀内の過度な楽観ムードの中、物価上昇が円安や原油価格高騰の一時的な要因に過ぎないことが見過ごされていた」。(永田岳彦)