〈水素でアルミを鋳造!?〉ヤマハが鋳造工程の実験施設を森町工場に新設

AI要約

ヤマハ発動機は7月10日、水素エネルギーの実証施設を森町工場に新設すると発表。CO2削減を目指し、アルミ鋳造工程での水素活用を検証する取り組み。

アルミの鋳造工程における水素ガス利用の重要性。現在の化石燃料利用からの置き換えがCO2排出削減につながる。

実験では水素ガスを用いる溶解・熱処理工程のバーナーを置き換えることで、CO2排出を削減。鋳造品の品質にも配慮。

〈水素でアルミを鋳造!?〉ヤマハが鋳造工程の実験施設を森町工場に新設

ヤマハ発動機は7月10日、水素エネルギーの実証施設を森町工場(静岡県周智郡)に新設すると発表した。多くのCO2を排出するアルミの鋳造工程における水素エネルギーの活用を検証するのが目的で、同社が掲げる「2050年のカーボンニュートラル」を加速させる取り組みだ。

アルミを鋳造する工程では、インゴットと呼ばれる素材を溶かす「溶解」と、最終的に素材の強度を高めるための「熱処理」という2つの工程がとくに多くの熱エネルギーを必要としている。現在はおもに都市ガスなどの化石燃料を利用しているが、これを水素ガスに置き換えることでCO2の削減を目指す、そのための実験施設を森町工場に新設する…というのが今回発表された取り組みの概要だ

製品製造における化石燃料の使用で、ヤマハが自社排出しているCO2の総量を100とすると、そのうちの55%は鋳造工程から発生しており、その55%の中でも溶解と熱処理工程に由来するCO2が75%に達するのだという。つまり、ヤマハでもっとも多くCO2を排出する工程からカーボンニュートラル(C/N)を目指していこうという、現実を見据えたプロジェクトと言える。

今回の実験で対象とされるのはアルミの鋳造工程で、鉄は対象外となっている。ヤマハの商材(=バイクなど)にとって重要度が高いのがアルミということもあるが、鉄は高周波で溶解しやすく、電気など他エネルギーへの置き換えが比較的容易なのだという。アルミ鋳造の方がCO2の排出量も多いそうだ。

◆アルミの鋳造工程においては、一番最初の「溶解」と最後の「熱処理」で化石燃料(都市ガス)を使うバーナーを多用しており、当然ながらCO2の排出量が多い。このバーナーの燃料を水素に置き換える実験を行うのが今回の目的だが、水素には水が含まれるため、鋳造品の品質に影響することがあり、その見極めを行うのも目的のひとつだという。

◆実験では従来の都市ガスを燃料とする溶解炉/熱処理炉に水素ガスに対応する設備を導入。グリーン水素を製造する装置や、水素とCO2を反応させて合成メタンを製造する装置の導入も検討中。右のグラフは製造工程で化石燃料から排出されたCO2の量(スコープ1と呼ばれる)の工程別割合。鋳造が半分以上を占めている。