楽天モバイル「プラチナバンド」開始 すぐ劇的改善はしない理由

AI要約

楽天モバイルがプラチナバンドを使った新サービスを開始したが、電波状況の改善にはまだ時間がかかる

プラチナバンドは建物内や地下でも届きやすい周波数帯だが、現時点ではまだ基地局の数が限られており、速度の確保に課題が残る

楽天モバイルは都市部を中心にプラチナバンドを展開する計画だが、地方エリアや他社回線に頼るエリアでは変化は期待できない

楽天モバイル「プラチナバンド」開始 すぐ劇的改善はしない理由

 楽天モバイルがついに「プラチナバンド」によるサービスを始動。しかしすぐに大きな変化があるわけではなさそうです。ケータイジャーナリストの石野純也さんが解説します。【毎日新聞経済プレミア】

 楽天モバイルが6月27日から「プラチナバンド」の電波を使ったサービスを開始した。

 プラチナバンドとは1ギガヘルツ(GHz)未満の周波数帯を指す。この周波数帯の電波は建物などの遮蔽物を回り込みやすく、屋内や地下にも届きやすい。一つの基地局でより広いエリアをカバーできるのも特徴だ。

 つながりにくいイメージを払拭(ふっしょく)したい楽天モバイルにとっては悲願とも言えるサービス開始で、同社は「つながりやすさも最強へ」とうたう。三木谷浩史・楽天モバイル会長も「建物が密集しているところや地下など、隅の隅まで電波が届くようになる」とPRする。

 しかし、電波状況がすぐに劇的改善するわけではない点には注意が必要だ。それはなぜか。

 ◇最初は穴うめ的な役割

 これまで楽天モバイルの4G回線には、1.7GHz帯の周波数しか割り当てられていなかった。そのため、当初は都市部などの建物内で圏外になることもしばしば。ビルの上層階などもカバーしきれておらず、地方でのエリアも限定されていた。

 こうしたエリアはKDDIから800メガヘルツ(MHz)帯の基地局を借りることで補完してきたものの、つながりにくいイメージを覆すまでには至っていない。

 そんな中、ついに楽天モバイルに700MHz帯の周波数が割り当てられ、サービス開始となったわけだが、6月27日時点で開局した基地局(700MHz帯)は世田谷区(東京都)の1局にとどまる。さらに、楽天モバイルが使う700MHz帯は地上デジタル放送と干渉するおそれがあるため、その対策も取らなければならず、電波を飛ばす方向も1方向に限定されている。

 また、楽天モバイルのプラチナバンドは「帯域幅」が3MHzと大手3社より狭い。その分、多くの接続があると混雑しやすい状況で、つながっても十分な速度が出るとは限らない。

 もちろんこれらは楽天モバイル側も折り込み済みで、速度の確保は既存の4G回線(1.7GHz帯)や拡充中の5G回線をメインにしつつ、圏外になってしまうエリアをプラチナバンドで穴埋めしていくことになる。つまり当面、都市部でプラチナバンドにつながるのはかなり限られたケースになると見られる。

 ◇まだ時間がかかる

 地方エリアも同様だ。他社の場合、地方では大型の鉄塔を建て、そこからプラチナバンドの電波を飛ばして広いエリアをカバーしている。

 一方、楽天モバイルは都市部を中心にプラチナバンドを展開する計画を打ち出している。そのため、地方エリア、特にKDDI回線に頼るエリアでは、すぐに変化が起きるわけではないだろう。

 楽天モバイルが総務省に提出した計画では、10年で約1万の基地局(700MHz帯)を建てる予定だが、最初の1、2年でどこまで達成するかは見えていない。世間では一気に電波状況が改善するかのように語られることもあるが、少なくとも年単位で時間がかかることは間違いない。

 とは言え、都市部では徐々につながりやすくなっていくのも事実だ。楽天モバイルはもともと料金プランは安いため、大手3社にとって以前より手ごわいライバルになったとは言えそうだ。