カルロス・ゴーン氏「ホンダ主導の買収劇」を指摘! 日産・三菱自との「3社連合」は今後どうなるのか?

AI要約

2024年8月1日、ホンダ・三部敏宏社長と日産自動車・内田誠社長が共同での記者会見を行い、電動化・知能化時代に向けた戦略的パートナーシップの具体的な取り組みを発表した。

3社連合が関係を深める中で、元日産CEOカルロス・ゴーンは提携の主導権を握るホンダに注目し、3社連合が資本提携にどう発展するかを見守っている。

ゴーンは、3社連合が効果的に連携するためには、リーダーシップと仕事の分担を明確にする必要があると指摘している。

カルロス・ゴーン氏「ホンダ主導の買収劇」を指摘! 日産・三菱自との「3社連合」は今後どうなるのか?

 2024年8月1日、ホンダ・三部(みべ)敏宏社長と日産自動車・内田誠社長が共同での記者会見を行った。両社長は2024年3月にも会見を開き、電動化・知能化時代に向けた戦略的パートナーシップの検討開始を発表したが、その時点では踏み込んだ内容はなかった。

 今回の会見では、両社による具体的な取り組みとして、主にふたつの契約内容が発表された。そのひとつは、次世代ソフト・デファインド・ビークル(SDV)向けプラットホーム領域での共同研究である。

 そしてもうひとつは、日産が約34%を出資する三菱自動車も、新たにこのスキームに参画する旨の覚書を交わしたことである。これらに加え、電気自動車(EV)バッテリーなど

・EV基幹部品の共通化

・車両の相互補完

などを進めていくことにも合意したとされる。

 ホンダ・日産・三菱の3社連合は“弱者連合”ともやゆされる。国内自動車メーカー各社は、トヨタグループ連合との

「2強体制」

に入ったとの見方が大勢を占めるなか、3社連合がどのような戦略を打ち出していくのか、注目が集まっている。

 そうしたなか、日産元CEOカルロス・ゴーンが、米国の自動車専門媒体オートモーティブニュースによるインタビューに応じ、3社連合に関して興味深い見解を示した。ルノー出身で、日産との経営統合に尽力した彼独自の視点から3社連合の行く末を見通している。

 本稿では、ゴーンによる見解を踏まえながら、3社連合が資本提携にまで踏み込む関係性へと発展するか、考察した内容を論じる。

 オートモーティブニュースは2024年8月6日、レバノン在住のカルロス・ゴーンのインタビュー記事を掲載した。

 ゴーンは、8月1日に発表された3社連合に対する見解を求められたのに対し、今回の提携でホンダが主導権を握ることは当然の理で、

「disguised takeover(偽装買収)」

という言葉を用いて、

「ホンダ主導による買収劇」

に発展するに違いないと断言している。その根拠には、3社のうちでホンダが最も主導的な立場にあることを挙げている。

 3社連合の各社を世界販売台数で比較すると、

・ホンダ(407万台)

・日産(344万台)

・三菱自動車(81万台)

となり、3社間の序列は明らかである。また、2025年3月期第1四半期の営業利益では、ホンダが4847億円で過去最高の四半期益だったのに対して、日産は前年同期比99%減の9億9500万円と急失速し、三菱自も前年同期比21%減の355億1900万円だった。

 3社連合に対抗するトヨタグループ連合(トヨタ、ダイハツ、スバル、スズキ、マツダ)の世界販売は1600万台ほどで、3社連合の倍に近い規模を誇る。営業利益に至っては、トヨタ自動車だけでも1兆3084億円(前年同期比17%増)と3社連合を大きく引き離しており、“弱者連合”とやゆされるゆえんである。

 ゴーンはインタビューのなかで、

「協業を通じてできることは、全体のわずか5%程度にすぎない。残りの95%はお互いが腰を据えて、しっかりとしたリーダーシップを発揮しながら、仕事の分担を明確にしていく必要がある」

という言葉を残している。ルノーと日産の経営統合を主導したゴーンならではの発言だが、3社連合による資本提携が奏功するかは、まさしく

「いうはやすく行うは難し」

である。