「断捨離」をした日銀は7月末の金融政策決定会合でどう動くのか

AI要約

先日、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授にインタビューがあり、その内容について補足解説が必要だと感じたので、渡辺物価理論について独自の解説を行う。

渡辺理論の主張は、価格メカニズムの機能不全が日本の経済に大きな影響を与えており、政策変更やショック療法的な手段が必要であるというものだ。

渡辺理論には賛否両論があり、筆者は理論の一部に賛成するが、アプローチには反対する立場を取っている。

「断捨離」をした日銀は7月末の金融政策決定会合でどう動くのか

 先日、物価に関する日本一、いや世界一の研究家である、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授にインタビューさせていただく機会があった。

それは「東洋経済オンライン」で2つの記事になった(前編「『物価が上がらなければいいのに』と嘆く人たちへ」、後編「日銀は『円安』『国債の山』『次の緩和』をどうするか」)。だが、インタビュアーの未熟さにより、インタビューの解説が必要だと感じたので、今回は筆者の理解する「渡辺物価理論」を独自に補足解説したい。

■なぜ「機能不全」を解消しなければいけないのか

 まず、渡辺理論の主張の中核は、以下のひとことに尽きる。

 「『物価とは何か』では、ミクロの価格を蚊に、マクロの物価を蚊柱にたとえていますが、蚊が死んでしまったので、蚊柱の動きも止まったというのが私の理解です。物価安定と見間違えてはいけない」。

 えっ? これだけでは、わからない?  では、もう少しかみ砕こう。渡辺教授の理論体系とは以下の1~6からなる。

1 日本では1995年以降、企業が自分の製品の価格を決める力を失った 

2 その結果、市場経済の中核である「価格メカニズム」が機能不全に陥 った

3 このコストはとてつもなく大きい。これが長期に定着すれば、実体経済へのダメージはさらに拡大、長期化する

4 だから、かなりの副作用があったとしても、価格メカニズムの機能不全を解消しないといけない

5 そのためには、社会全体、経済全体の認識を変えるために、マクロの 政策変更が必要であり、有効である可能性がある

6 そのためには、ショック療法的な手段も試してみる価値はあるし、試すべきだ

 ちなみに、筆者は1から3まで120%渡辺理論に賛成で、渡辺理論の世界一の理解者であると同時に、世界一、渡辺理論に近い意見を持っているのが小幡績である。しかし、筆者は4から6には強く反対で、ここが渡辺・小幡の大きな対立点である。目指すゴールは一緒、問題認識も一緒、しかし、アプローチが180度(いや90度かな? )異なる。

■「渡辺チャート」が可視化した「日本企業の停滞」

 順番に、少し詳しく見てみよう。