本気のレース屋集団「無限」がSUVをチューニングしたら、気持ちよく走れるマシンに仕上がっていた件

AI要約

無限の起源はレースの世界にあり、創業50周年を記念する2023年には多くの成功を収めてきた。

ヴェゼルをチューニングした「Sports Style」は走りが軽快でフィーリングもスッキリとしたもので、エアロパーツやパフォーマンスダンパーが効果的に活かされている。

マイナーチェンジ前のヴェゼル用サスペンションキットはフロントのしっかり感を高め、リアのしなやかさも備えている。それにより、走行性能が向上している。

本気のレース屋集団「無限」がSUVをチューニングしたら、気持ちよく走れるマシンに仕上がっていた件

 2023年に創業50周年を迎えた無限の起源はやはりレースの世界だ。ホンダのエンジンをベースに仕立てたFJ1300用エンジンの「MF318」でデビューウィンしたのを皮切りに、1975年にはシビックセダン・レーサー向けのアフターパーツの販売を開始。

 その後もシティターボレーサーの開発を行なったり、フォーミュラではF3000からF1で数々の優勝を飾ったり、近年ではスーパーフォーミュラでチームタイトルを獲得するなど、本気のレース屋集団である。

 一方で市販車向けの事業も1984年の「MUGEN CR-X PRO.」より本格的に開始。「HONDA CIVIC MUGEN RR」「HONDA CR-Z MUGEN RZ」「HONDA S660 MUGEN RA」などのコンプリートモデルを輩出したほか、さまざまなホンダ車に対して数々のカスタマイズパーツをリリースしている。

2024年4月の改良版「ヴェゼル」の乗り味はいかに?

 そんなレース集団がSUVをイジったらどんな世界になるのか? それが今回のお題である。そこでまず試乗したのはつい先日マイナーチェンジが行なわれた「ヴェゼル」だ。静粛性や乗り心地が飛躍した最新のヴェゼルは、一体どのように料理されているのだろう?

「Sports Style」をコンセプトとするこのヴェゼルには、フロントからリアまでアンダースポイラーが与えられているほか、リアにはウイングスポイラーやテールゲートスポイラーが備えられている。また、フロントグリル上にはデカールを追加することで、かなり引き締まったスタイルに変貌しているところも面白い。

 いかにも走りに振られた印象が強い。けれども中身の変更はわずかだ。1本あたり-3.2kgを達成する18インチアルミホイール、スポーツサイレンサー、そして前後に備えられたパフォーマンスダンパーといったところがチューニングしたポイントとなる。

 走らせてみるとフットワークはかなり軽快に改められており、運動性能も乗り心地もスッキリとしたフィーリング。おまけに微振動も軽減されている感覚がある。特に心地よかったのはステアリングの切り始めだった。わずかに切ったあたりからしっかりとした手応えが得られるように改められており、リアの追従性が高まった感覚が得られているのだ。これは高速道路のジャンクションなどに自信を持って入れる感覚で、SUVの腰高な感覚も怖くないところがうれしい。おそらく数々のエアロパーツやパフォーマンスダンパーのおかげだろう。また、爽快さが得られるエキゾーストノートも好感触だった。

改良前「ヴェゼル」向けサスペンションキットを試乗

 続いて試したのはマイナーチェンジ前のクルマに向けてリリースされる予定のサスペンションキットだ。新型は走りも乗り心地も改められ、特にリアのしなやかさが際立っている感覚があったが、マイチェン前のクルマはそうじゃなかった。フロントはユルい感覚があり、入力をそこでいなしている感覚があるが、コーナリング中に路面が荒れていたりするとバウンスしてしまうし、リアは逆に旋回重視で突っ張った感覚があった。それをどう払拭できているのかが興味深い。

 走らせてみるとフロントのしっかり感はかなり高められた感覚で、意図した通りに走ってくれるし、懸念材料だったバウンスもかなり軽減している。一方でリアはしなやかさが生まれ、感覚としては前後入れ替わったかのようなフィーリングがある。いまのところパフォーマンスダンパーの設定はないらしいが、この足まわりキットだけでもかなりのレベルに引き上げられている感触があった。

ちょっと大人でちょっとスポーティに仕上げた「Z-RV」

 続いて乗った「ZR-V」は、ヴェゼルと同様にアンダースポイラー類が充実。テールもガーニーフラップやテールゲートガーニッシュが与えられている。さらに、ベースモデルより1インチアップとなる19×8.5J +50のホイール「MDC」を装着しているところがZR-Vの特徴だ。

 ベースモデルは18×7.0J +50だから、見た目の安定感の違いは歴然。タイヤサイズも225/55R18から235/45R19に改められている。また、新型ヴェゼルと同様にパフォーマンスダンパーを前後に装備。ステンレス製のスポーツエキゾーストシステムはテールピースだけでなくセンター部もまとめて交換するスタイル。

 ZR-Vは走り出しからノーマルとは違い圧倒的な重厚感が得られている。ホイールは1本あたり0.2kg軽くなっているらしいが、やはりタイヤが太くなったことが相当に効いているのだろう。それを後押ししているのが巡行時に野太いサウンドを展開するマフラーだ。

 パワーユニットのe:HEVは巡行時にかなり低い回転で回っているようだが、その際に重低音を常に轟かせてくれるのだ。いかにもチューニングモデルといったこれらの世界観は、この手のクルマが好きな人々のハートをわしつかみにすることだろう。けれども高速に乗ってエンジンを回してみるといつまでも重低音じゃなく、爽快な高音が感じられる。この二面性はなかなか面白い。

 フットワークは常に頼りがいのある感覚で、高速コーナーでも安定感は抜群。ガーニーフラップのおかげもあってか、ベタっと地を這うかのようなフィーリングをSUVで生み出しているところが好感触だ。ステアフィールも手応えが常に一定しており、リアの追従性も良好。けれども、乗り心地が悪化するようなこともなく、高速道路の継ぎ目などをうまくいなしていたことが印象的だ。

 冒頭にも述べたように、レーシング直系の無限。それだけにどれだけガチガチなSUVが登場するのかと身構えていたのが正直なところだ。けれども、どれもストリートに合わせた絶妙な仕上げ。SUVを理解し狙ったフィールドにきちんと合わせ込んでパーツを仕立ててくるところはさすがだ。