過剰生産に価格急落、欧米の関税…苦悩する中国の太陽光メーカー 中東が救世主に

AI要約

中国の太陽光発電産業は世界有数の規模を持ち、生産能力は世界一となっているが、過剰な生産能力と価格急落による危機に直面している。

グローバル市場での需要が重要であり、欧米市場が主要な役割を果たしてきたが、中国企業への圧力が高まっており、中東地域への輸出が増えている。

中東地域は新エネルギー分野に遅れがありつつあるが、太陽光発電の開発に力を入れ、クリーンエネルギー計画を進めている。

過剰生産に価格急落、欧米の関税…苦悩する中国の太陽光メーカー 中東が救世主に

中国の太陽光発電産業は世界有数の規模を誇る。2023年にはシリコン材料、シリコンウエハー、電池、モジュールの生産能力が世界一となり、モジュールの生産能力に至っては全世界の80%以上を占めている。太陽光発電のコンサルティングを手がける資源総合システムによると、23年1~6月の太陽光発電モジュールの世界出荷量は、1位がジンコソーラー(晶科能源)、2位が天合光能(トリナ・ソーラー)、3位がロンジソーラー(隆基绿能)と、いずれも中国企業だった。

しかし急速な発展は生産能力過剰と価格急落という深刻な問題をもたらした。業界全体で生産能力は4倍になったが、利益率は7割低下した。ジンコソーラーの李仙徳会長は、中国市場では太陽光発電産業の全体的な製品価格がすでに低水準にあると述べている。中国太陽光発電大手・協鑫集団(GCL Holdings)の朱共山会長も、業界の無秩序な競争に対し警告を発している。過去2年間、資本の煽り立てと企業のやみくもな拡張の結果、生産能力は急増し、それに伴って利益率は急激に低下した。 現在、大手のロンジソーラーが巨額の損失を計上し、多くの企業の株価が半減しているのも、業界全体が危機に直面していることの表れだ。

このようななか、過剰な生産能力を解消するための鍵となるのがグローバル市場であり、これまで欧米市場がその主要な役割を担ってきた。2011年以前は、中国の太陽光発電製品の57%が欧州へ、15%が米国へ輸出され、国内で販売されたのはわずか6%だった。しかし11年に欧米で反ダンピング関税・反補助金関税が実施され、中国の太陽光発電企業は壊滅的な打撃を受ける。大企業はこれを回避するため、14年から東南アジア経由で欧米に販売することに決め、現地に工場を建設した。

しかし欧米は中国企業への圧力をさらに強めている。欧州では今年「ネットゼロ産業法(The Net-Zero Industry Act)」が採択され、太陽光発電モジュールの4割をEU域内で生産し、現地の生産能力を優先して調達することが求められた。米政府も5月14日、中国製の電気自動車(EV)やEV用リチウムイオン電池、太陽光パネル、鉄鋼・アルミ、クレーンなどの輸入関税を大幅に引き上げると発表した。EVの関税は現行の25%から100%に、太陽光パネルは25%から50%に引き上げられる。また、東南アジア経由の迂回輸出を防ぐため、東南アジア4カ国に対する調査を開始した。

一方、中東地域は中国と貿易面で蜜月関係にあるため、太陽光発電製品の重要な輸出先となりつつある。

中東地域は石油や天然ガス資源が豊富だが、新エネルギーの分野は立ち後れている。世界的なエネルギー構造の転換に伴い、中東諸国もクリーンエネルギーを重視するようになった。また、中東地域は日照時間が長いため、太陽光発電を開発する環境としては非常に恵まれている。

現在、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどの国々は壮大なクリーンエネルギー計画を打ち出しており、その中でも太陽光発電に重点が置かれている。サウジアラビアは2030年までに太陽光発電の設置容量を40GWに増やし、今後7年間で約5倍増加させる計画を立てている。