戦闘機市場に波紋? 「GCAP」「NGAD」の計画レビューで懸念される「第6世代戦闘機」の行方とは

AI要約

ファンボロー国際航空ショーで、日英伊3か国が共同開発する次期戦闘機GCAPの模型が話題に。

GCAPのイラストや模型から、機体構成や形状に変更があり、機体規模や形状の設定作業が進行中。

英国で政権交代とGCAP計画の見直し論が巻き起こり、軍事予算の拡大やGCAP開発の遅れが懸念されている。

戦闘機市場に波紋? 「GCAP」「NGAD」の計画レビューで懸念される「第6世代戦闘機」の行方とは

 7月22日から開催されたファンボロー国際航空ショーで、日英伊3か国が共同開発する次期戦闘機GCAPの模型が展示され、話題を呼んだ。

 英BAEシステムズはイラストも発表しているが、過去に発表されたイラストと比べると、機体の全体的な構成は変わっていないものの、主翼や尾翼の形状に変化が見られる。

 イラストや模型の外観からは、翼の平面形が「ラムダ翼」から単純な

「デルタ翼」

に近い形状に変更され、主翼面積が増大していることがわかる。構造効率の向上や燃料容積拡大で、より大きな航続能力を得るためだと思われるが、これは要求性能に変更があったか、あるいはエンジンの設計進捗(しんちょく)を反映した可能性がある。

 要求性能や搭載エンジンに合わせて機体規模や形状を設定する作業は、概念設計あるいは基本構想設計と呼ばれ、設計作業の初期フェーズに当たる。この設計構想が固まると、ようやく具体的な基本設計に進むことができるのだが、GCAP開発プロジェクトは基本構想を固めつつある初期段階だ。

 ところが、英国では7月に保守党から労働党への政権交代が起き、GCAP計画の見直し論が巻き起こっている。労働党政権は、前政権の防衛調達計画をそのまま継承するのではなく、安全保障環境に応じた計画の見直しを指示しており、その結果次第でGCAPの開発についても判断されることになるという。

 欧州諸国はロシアのウクライナ侵攻を受けて軍備強化に動いており、労働党政権も軍事予算の拡大そのものを覆す考えまでは示していない。しかし、軍関係者やシンクタンクなどのなかには、2035年以降に配備されるGCAPの開発よりも、当面の軍事力強化を優先するべきだという考えを示す識者も多い。

 もし、英国が短期的な兵力増強を優先させ、GCAPへの投資を縮小すれば、そのぶんGCAPの開発は遅れることになり、そのギャップはユーロファイターやF-35など既存戦闘機で埋めることになるだろう。場合によってはGCAPの開発計画そのものが抜本的に見直され、中止に至る可能性さえ否定できない。