「CCS」でCO2地中貯留へ 2030年の実用化なるか コスト高く補助金で産業育成へ

AI要約

地下にCO2を貯留する脱炭素技術「CCS」の開発が本格化しており、政府が年間最大1200万トンの貯留を目指している。

世界ではCCSが広まっており、排出企業にとっても費用が削減される仕組みが整っている。

技術革新によるコスト低減や安全対策が今後の課題であり、2032年にはさらなる貯留量の拡大が目指されている。

「CCS」でCO2地中貯留へ 2030年の実用化なるか コスト高く補助金で産業育成へ

工場や発電所から排出される二酸化炭素(CO2)を、地下に貯留する脱炭素技術「CCS」の開発が本格化している。政府は2030年には現在の年間総排出量の1%にあたる年間最大1200万トンの貯留を目指す。ただ設置や運用にかかる費用が高く、現時点で企業が事業を進める環境は整っていない。政府では補助金事業を通じ、企業の取り組みをうながし「CCS産業」の育成を進める。

■世界で拡大

CCSは排ガスを回収してCO2を分離したうえで、パイプラインや船舶で別の施設に運び、圧力をかけて地下深くに埋める技術。電力大手や石油開発会社などが出資する日本CCS調査(東京都)によると、昨年7月現在で世界では41件が操業中、351件が建設・開発中。世界的な脱炭素の潮流のなか、過去6年間で大幅に増えた。

CCSは1970年代に米国で始まったが、もともとは石油の出が悪くなった油田にCO2を送り込むことで、出を良くするのが目的だった。

■企業の便益は

しかし、脱炭素化の流れの中で、油田が乏しい日本でもCCSは注目されるようになってきた。

日本での導入にあたって重要となるのがCO2の排出に金銭的負担を負わせる「カーボンプライシング」、排出する権利の取引を行う「カーボンクレジット」といった制度だ。CO2の排出企業からすれば、国からの補助金を得ながらCCSに取り組んだ方が結果として出費が安くなる仕組みで、CCSの導入国で取り入れられている。

日本では2030年の事業開始に向け、26年には企業がCCS投資を決定できるよう補助金を含めて準備を進めており、斎藤健経済産業相は6月の会見で「早急に事業者の円滑な参入、操業を可能とする支援制度の在り方について検討していきたい」と述べた。CO2の排出が多い電力会社や製油所、製鉄所などの参入が期待されている。

技術革新によるコスト低減も欠かせない。

国は32年時点で現在の日本のCO2総排出量の1割~2割にあたる年間1・2億~2・4億トンの貯留を目指す。しかし現在の技術でCO2を分離・回収して海底に送るまでの費用は1トンあたり計約1万3500円かかる計算。32年には8千円にまで減らす目標で、技術開発で数千億~1兆円単位の予算低減につなげる考えだ。

■安全対策も