JAL、透明画面で表情見ながら接客 聴覚障がい者や訪日客想定

AI要約

TOPPANホールディングス(7911)傘下のTOPPANと日本航空(JAL/JL、9201)が羽田空港で翻訳対応透明ディスプレイを活用した実証実験を開始。

グランドスタッフが相手の表情を見ながら透明なディスプレイに表示される字幕を使って会話し、より的確な案内を提供。

2代目のモデルで多言語対応を実現し、聴覚や発話の障がいを持つ人や外国人利用者の旅行を支援する環境を構築。

JAL、透明画面で表情見ながら接客 聴覚障がい者や訪日客想定

 TOPPANホールディングス(7911)傘下のTOPPANは7月2日、日本航空(JAL/JL、9201)と共同でTOPPANの翻訳対応透明ディスプレイ「VoiceBiz UCDisplay」を活用した実証実験を羽田空港で始めた。空港のグランドスタッフ(旅客係員)が、聴覚や言葉が不自由な利用者や訪日外国人とやり取りする際、相手の表情を見ながら透明なディスプレイに表示される日本語や外国語の字幕を使って会話する。

 両社によると、従来の筆談やスマートフォンなどを使ったコミュニケーションよりも、グランドスタッフが相手の表情や話し方を把握しながら応対できるため、より的確な案内ができるという。

◆相手の表情見ながら接客

 羽田空港第1ターミナルの「スペシャルアシスタンスカウンター」に設置したVoiceBiz UCDisplayは、TOPPANの音声翻訳サービス「VoiceBiz」と、20.8インチのカラーディスプレイ、Android OSが動くタブレット、音声入力用マイクなどを組み合わせたもので、今秋から提供予定の2代目となるモデル。透明なディスプレイに字幕を入力する際は、タブレットに表示されるソフトウェアキーボードかマイクによる音声入力を使い、翻訳は英語や中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、スペイン語、フランス語など13カ国語に対応した。

 2日の実証実験は、聴覚障がいを持つ利用者の接客を想定。参加したJALのグランドスタッフは、「相手の顔を見ながら接客できるので、表情から困っているかがわかりやすい」といい、表情や口の動きを見ながら音声入力で会話できる点が良かったという。

 利用者役は、グループ会社JALサンライトで働く聴覚障がいを持つ女性社員が担当。タブレットのソフトウェアキーボードを使い、ディスプレイ越しにグランドスタッフとやり取りした。「空港は騒音が多く相手の声を聞き取りにくいことがあり、口もとを見ながらディスプレイでやり取りできるのが良かった」と感想を述べた。

 JALでは、羽田で2日から8日まで、伊丹で8月20日から26日まで実証実験を予定。羽田では、手伝いが必要な利用者を接客するスペシャルアシスタンスカウンターと、1タミの国際線乗り継ぎカウンターで検証を予定。伊丹でも、スペシャルアシスタンスカウンターなどで音声入力や翻訳の精度、操作性などを検証していく。

◆純国産AI翻訳エンジンで多言語対応

 VoiceBiz UCDisplayの対応言語は、日本語同士のやり取りと、翻訳時は英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、ポルトガル語(ブラジル)、ミャンマー語、スペイン語、フランス語、フィリピン語。翻訳エンジンは、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)の多言語音声翻訳技術に基づく純国産AI翻訳エンジン(NMT)を採用した。

 TOPPANのによると、外国製の翻訳エンジンは英語が起点となるため、多言語翻訳時に日本語から英語を経て目的の言語へ翻訳するのに対し、NMTは日本語を起点に目的の言語へ直接翻訳するため、より日本語の表現に基づいた翻訳結果が期待できるという。

 2023年10月から提供している初代のUCDisplayは、単色31.5インチのモニターを採用。鉄道や観光窓口、商業施設、自治体など全国で約50カ所に導入されたが、導入企業などから小型化やカラー化を望む声があったという。

 今回使用する2代目は、カラーの20.8インチモニターを採用すると共に、表情と字幕が同じ視界に入る条件をクリアするため、高さを従来モデルと同等にする土台を設けた。カラー化により、従来は写真などを表示する際、単色モニターに表示できるように変換作業が必要だったが、そのまま表示できるようになったという。

 両社は今回の検証を通じて、聴覚や発話の障がいを持つ人や、さまざまな国の人が旅をしやすい環境を構築したいという。

 JALは空港の利便性を高める「スマートエアポート」と呼ぶ取り組みを2020年からスタート。ITを活用した人が介在するサービスと、最新技術によるセルフサービスを組み合わせることで、グランドスタッフが接客したほうが良い分野に注力しやすい環境を整えた。今回の取り組みも、人が応対することで問題解決につなげる分野として検証していく。