新紙幣、パチンコ台は使えるのか 大手も対応完了「難しい」事情

AI要約

パチンコ業界が新紙幣発行に対応するために機器の更新作業に追われている

ダイナムなどの大手パチンコチェーンが膨大な費用負担と改修作業に苦しんでいる

新紙幣に対応できない事業者が増え、厳しい淘汰が進む可能性がある

 パチンコ店には逆風か――。7月3日の新紙幣発行を前に、機器の更新作業が必要なパチンコ業界が対応に追われている。パチンコ機1台ごとの対応が必要なケースが多く、新紙幣への対応が業界の重荷となり、廃業や整理が進む可能性もある。

 ◇1台ごとに機器の更新必要

 パチンコチェーン大手「ダイナム」(東京都荒川区)は4月以降、各台に備え付けられた機器の交換作業を急いでいる。主に対応が必要なのは、現金を投入してパチンコ玉やメダルと交換する「サンド」と呼ばれる機器で、パチンコやパチスロ機の脇に1台ずつ備え付けられている。

 サンド自体の交換には1台当たり約20万円かかり、紙幣を識別するセンサー部品を交換するだけでも、2万~3万円はかかる。業界内では、1店舗当たり1000万~1500万円の支出が見込まれているという。

 ダイナムは沖縄県を除く全国で397店舗を展開し、パチンコ・パチスロ機は計約19万5000台に上る。多額の費用負担に加え改修作業も膨大で「部品は確保できているが、改修業者の人手には限界があって(更新作業は)難しい」(広報担当者)という。

 ダイナムの新紙幣対応は、台数ベースだと6月末時点で82%、11月末時点で94%程度になる予定。未対応の台の近くには、新紙幣が使えるICカードの券売機を置くなど対策を講じる。同社広報担当者は「できるだけ設備投資を抑えられるように計画を進めてきた。お客様に迷惑がかからないようにしたい」と話す。

 パチンコホールの運営実態を調べた帝国データバンクによると、2023年の事業者数は統廃合などが進み、前年比11・4%減の1336社だった。売り上げ全体はコロナ禍からの客足の回復もあって1・9%減で踏みとどまり、倒産件数も前年の34件から24件に減少した。

 しかし、帝国データの担当者は「新紙幣の発行でサンド購入などを迫られ、多額の設備投資が不可欠」と話しており、廃業を決めた事業者も複数出てきているという。「資金繰りに余裕のある事業者は少ない」として、24年は廃業がさらに増えて淘汰(とうた)が進む可能性がある。【安藤龍朗、竹地広憲】