猛暑に負けない米「にじのきらめき」 作付け前年1.5倍超〝次世代のエース候補〟

AI要約

高温耐性品種「にじのきらめき」の作付けが急速に広がっている。2024年産の作付面積は7600ヘクタールを上回り、前年から1・5倍以上となる見通し。業務筋から評価も高く、“次世代のエース候補”との呼び声もある。

「にじのきらめき」は高温耐性品種として21の県で登録され、産地拡大が進む。多収性が支持され、収益性も高い。生産者からも栽培しやすさが評価されている。

流通業者の評価も高く、業務用から家庭用への拡大も期待されている。猛暑下でも安定した品質を維持できる銘柄として注目されている。

猛暑に負けない米「にじのきらめき」 作付け前年1.5倍超〝次世代のエース候補〟

 米の高温耐性品種「にじのきらめき」の作付けが急速に広がっている。2024年産の作付面積は当初見込みの7600ヘクタールをさらに上回り、前年産からは1・5倍以上となる見通し。多収で栽培しやすく、猛暑でも安定した品質が期待できるのが強み。業務筋からの評価も高い品種で、“次世代のエース候補”との呼び声もある。

 「にじのきらめき」は、農研機構が開発した高温耐性品種で、18年にデビュー。わずか6年で産地品種銘柄に登録する県は21に上り、試験栽培などを含めるとさらに多くなるとみられる。関東や東海地方に加え、直近では四国や中国地方でも拡大が進む。

 背景には高温耐性品種への切り替えを進める産地の意向がある。記録的な猛暑となった23年産では、高温障害による等級低下が全国的に多発。最大品種の「コシヒカリ」は1等比率が51%と苦戦した。一方、「にじのきらめき」などの高温耐性品種は高水準を維持した。

 多収性でも支持される。農研機構によると「にじのきらめき」の10アール当たり収量は「コシヒカリ」に比べ約15%、多肥栽培では30%近く多い。

 収量は農家所得に直結する。主産地の茨城県・JA北つくばによると、「にじのきらめき」の10アール当たり収入は管内主力の「コシヒカリ」に比べて2、3万円高い。JAの買い取り単価は「コシヒカリ」に劣るものの、10アール収量が約150キロ多いためだ。米穀販売課の篠崎剛課長は「生産コストがほぼ変わらず、手取り増につながる」と話す。

 栽培しやすいことも生産者の支持を集める理由だ。管内の筑西市で「にじのきらめき」を20ヘクタール作付けする早瀬英昭さん(67)は、「コシヒカリのように中干しを徹底しなくても倒伏しにくく、草丈が短いため稲刈りがしやすい」と話す。縞葉枯(しまはがれ)病の抵抗性に優れる点も評価が高いという。

 実需や流通業者の評価も高く、業務用を中心に販路の開拓も進んでいる。米卸の全農パールライスは「大粒で炊き増えしやすいことに加え、粘りが少なく、おにぎりなどへの適性が評価されている」と分析する。業務用では品質と価格のバランスが重要視される中、「コシヒカリ」や「はえぬき」よりも単価が値頃な点も強みだという。

 今後、家庭用でもシェアの拡大に期待する向きがある。全農パールライスは、「食味は家庭用でも十分に通用する水準」と評価する。

 高温障害が多発した23年産米を契機に、猛暑下でも安定した品質が期待できる銘柄の注目度は高まっている。「取引量を増やしてほしいとするオファーが相次ぐ」(篠崎課長)など、引き合いが強い。今後も作付けの拡大基調が続きそうだ。(鈴木雄太)