意外と多い、部下を怒鳴り散らす上司に「欠けているもの」

AI要約

特権意識の強い上司は部下の感情を無視し、暴言や罵倒を繰り返す。

上司は自分の言動が受け入れられるかには気を使い、上からの評価が重要視される。

想定外の事態で、過剰な気配りが逆効果になることもある。

意外と多い、部下を怒鳴り散らす上司に「欠けているもの」

 根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

 特権意識が強い上司ほど、自分の暴言や罵倒で部下がどれほど傷つき、つらい思いをするかに想像力を働かせることができない。いや、それどころか想像してみようとさえしない。想像力が欠如しているからこそ、感情に任せて暴言を吐き、罵倒し続けるのだろう。

 もっとも、想像力の欠如を無自覚に露呈させるのは“下”に対してだけである。逆に、“上”に対しては、自分の言動がどう受け止められるか過剰ともいえるほど警戒し、不快感や反感をかき立てないよう慎重にふるまう。“上”からどう見られるかが最大の判断基準になっているからであり、そのおかげか“上”から気に入られ出世することも少なくない。

 ところが、このような涙ぐましい努力が想定外の事態を招くこともある。センサーの感度を極力上げて、“上”にいい印象を与えられるように頑張っていたのに、その“上”が何らかの事情で退社したり、権力を失ったりする場合だ。そうなると、それまでの気遣いがどこにいったのかと首を傾げたくなるほど、ぞんざいな対応をするようになる。

 よく聞くのは、ポストオフや定年後再雇用になった元上司に対して、一切話しかけない、場合によっては挨拶も返さない元部下がいるという話だ。元部下の豹変に悩んで落ち込み、眠れなくなった定年後再雇用の男性が私の外来を受診して、「管理職ではなくなり、何の権限もなくなった奴は無価値だと向こうは思っているから、ぞんざいに扱うのでしょうか」と尋ねたこともある。聞けば、この男性が上司として人事権を握っていた頃は、挨拶さえしなくなった元部下は非常に従順で、盛んに媚びへつらっていたそうだ。しかも、この男性の定年後その後釜に座ったという。

 この元部下のように、話しても挨拶しても一文の得にもならないと思えば平気で無視する人はどこにでもいる。根底に潜んでいるのは損得勘定であり、相手の地位や役職を見て行動し、平気で態度を変える。しかも、それを恥ずかしいとも、後ろめたいとも思わない。