コスパ至上主義の若者が「無駄」を忌避する「困った現実」

AI要約

若手社員の帰属意識の希薄化やコストパフォーマンス至上主義の影響により、将来の役に立つかどうかを即座に判断する傾向が見られる。

若者は無駄を忌避し、自己保身に走り、職場の人間関係に関する悩みが増加している。

職場を腐らせる人が一人でもいると、全体にその影響が及び、問題が拡大していくことを著者が指摘している。

コスパ至上主義の若者が「無駄」を忌避する「困った現実」

 根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

 自分が勤務する会社への帰属意識が上の世代と比べてはるかに希薄になった若手社員にとって重要なのは、どれだけ有利な条件で転職できるかということだと聞く。そのためにはスキルアップが必要であり、それが今いる部署でできるかどうかを気にする若手社員が増えているようだ。ここで紹介した新入社員が現場事務所での勤務を、20代の女性社員が営業部門での勤務を嫌がったのも、そこでの経験が将来役に立ちそうにないという計算が働いたからかもしれない。

 どんな経験であれ、役に立つか、立たないかは、必ずしも今すぐわかるわけではない。現場での経験が将来内勤や営業の仕事に携わる際に役に立つかもしれないし、営業部門での経験が開発部門での業務に役に立つかもしれない。だが、現在やっている仕事が将来役に立つか、立たないかは、その仕事をしているそのときにわかるわけではない。何年か経ってから初めてわかることが多いのだが、それまで待てない若者が目立つようになった印象を受ける。

 その一因として、コストパフォーマンスを何よりも重視するコスパ至上主義が社会の隅々にまで浸透したことが挙げられる。その結果、「最低限のコストで最大限のアウトプットを生み出す」ことが素晴らしいという価値観の持ち主が増えた。このようにコスパに敏感なのは、消費社会で幼い頃から常に“買い手”の立場に身を置いてきたからだろう。

 当然、常にコスパを考えずにはいられず、職場においても労働という“苦役”をできるだけ減らしてコスパをよくしようとする。あるいは、自分の貴重な時間とエネルギーを費やして“苦役”を提供する以上、それが十分報われたとも将来役に立つとも思えなければ、自分が現在やっている仕事が無駄になったように感じる。

 コスパ至上主義の若者が何よりも忌避するのは、無駄という言葉だ。だから、自分が今いる部署での“苦役”が無駄になるかもしれないと思えば、別の部署に異動させてもらうために何でもするのは、本人にとっては理に適っているのかもしれない。たとえ、それが職場の上司や同僚だけでなく、診察した精神科医もあきれさせる行為であっても。

 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。