九州の路線価プラス2・9%…中心部の再開発進む福岡県は上昇率全国1位の5・8%

AI要約

九州の路線価が前年比プラス2・9%で上昇し、熊本県や福岡県が全体を押し上げた。特に、台湾積体電路製造(TSMC)の第2工場建設によるマンション需要が急増している。

熊本県菊陽町では税務署ごとの最高路線価がプラス24・0%で、全国2番目の上昇率を記録。福岡県の平均変動率はプラス5・8%で、全国1位の上昇率だった。

不動産業者は工場周辺の住宅需要が高まっており、マンション建設計画も進行中。ただ、急激な価格上昇による影響もあり、地域の変化を感じる声もある。

 1日に発表された2024年分の路線価(1月1日時点)で、九州の平均変動率は前年比プラス2・9%だった。全体を押し上げたのは、熊本県や福岡県での強いマンション需要だ。中でも、台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場に続いて第2工場が建設される熊本県菊陽町では、税務署ごとの最高路線価がプラス24・0%で、上昇率は全国2番目。福岡県の平均変動率はプラス5・8%で、全国1位の上昇率となった。(大久保和哉)

 「工場周辺の住宅需要はまだまだ高い。連日のように問い合わせが来ている」。熊本県を中心に不動産事業を展開する「アズマシティ開発」の東伸彦社長(42)が語った。

 TSMCが菊陽町の第1工場の隣接地に第2工場を建設する方針を明らかにしたのは4月。その前から、近隣での建設を見込む半導体関連企業などから社宅用マンションの相談が相次いでいたという。4月から中国人スタッフ1人を雇って対応している。

 5年ほど前に町内に店を構えた際、土地の購入価格は1坪(3・3平方メートル)あたり18万円だったが、最近は近くの土地が約6倍の高値で売り出されているという。来年にかけて同町や周辺の大津町、合志市で計約1000戸の賃貸マンションの新築を計画中で、東社長は「価格が上がりすぎて、スムーズに建築が進むか警戒感はある」と漏らした。

 価格急騰は老舗店舗などに影響を与えている。菊陽町菊陽町の元青果店経営者(53)は昨年3月、土地所有者から借地料の値上げを告げられ、20年以上前から親しまれていた店を同9月末で閉じた。跡地にはマンションが建設中だという。

 その後、熊本市東区の温浴施設の支援を受け、昨年12月から施設の敷地内で店を再開した。急激な町の変化に「今までのコミュニティーが変わってしまって残念」と寂しさをにじませた。

 一方、福岡市中心部の再開発事業を背景に、上昇率が全国トップとなった福岡県。特に高かったのが、同市東区千早4「千早並木通り」の14・3%と同市早良区西新4「明治通り」の14・0%で、ともに市中心部から近く利便性の高い地域だ。

 福岡市への通勤圏内にある春日市や久留米市などでの上昇も目立つ。路線価の評価を担当した浅川博範・不動産鑑定士は「福岡都市圏でマンション用地を仕入れるのが難しくなり、割安感がある地域が伸びた。今後もマンション用地の上昇は続くとみられる」としている。