「誠意感じられぬ」 小林製薬の企業体質に疑問の声 紅麹問題

AI要約

小林製薬が新たに76人の死亡事例を発表し、被害者や取引先の不信感が高まっている。

被害者や取引先からは、情報公開や被害者対応の遅れに対する批判が相次いでおり、事件の深刻さが浮き彫りになっている。

製品を使用した人々の安全性や健康への懸念が高まり、企業の危機管理に対する疑問も広がっている。

「誠意感じられぬ」 小林製薬の企業体質に疑問の声 紅麹問題

 命や健康に関わる情報がなぜ速やかに公表されないのか。28日、新たに紅こうじサプリとの関係が疑われる76人の死亡事例を明らかにした小林製薬(大阪市)。従来、国や大阪市に報告してきた死者数の15倍超だ。サプリを摂取した人や取引先は突然の知らせに不信感を募らせ、同社の企業体質を問う声が相次いだ。

 「小林製薬には改めて前代未聞の深刻な事態だと受け止めてほしい」。サプリを摂取し、4月にファンコニー症候群と診断された神戸市の臨床検査技師の男性(32)は語気を強めた。1月下旬から原因不明の不眠や倦怠(けんたい)感に悩まされ、3月の報道で被害を知った。職場復帰した今も通院を続けている。

 男性は現在、補償について同社とやりとりを重ねているといい、「情報発信や被害者対応が後手に回っていて危機意識やガバナンスの欠如を感じる。仕事を頑張り、前に進みたいと思っている被害者の気持ちを酌んで誠実に対応してほしい」と訴えた。

 回収対象となっている製品を約3カ月服用したという東京都の主婦(49)も「小林製薬は問題発覚当初も対応の遅れを批判されていた。行政への報告がまた遅れたのは誠意が感じられない」と憤る。問い合わせへの折り返しが1カ月以上なかったこともあるといい、「新しい情報はニュースで知るばかりだ」と嘆いた。

 「人数の多さに驚いた」と話すのは大阪府内の男性(68)。サプリの効果を感じず、約2週間で服用をやめたが「あのまま続けていたら症状が出ていたのではないか。他の健康サプリの安全性についても心配している」と話した。男性は小林製薬の公式通販サイトからサプリを購入したが、同社からの連絡は少ないといい、「被害情報を含めてもう少し積極的に、細やかに情報発信すべきではないか」と指摘した。

 「また風評被害が大きくなるのではないか」。小林製薬の紅こうじ原料を扱っていたあるメーカーの男性社長は、関連が疑われる死亡事例が一気に増えたことに危機感を強める。このメーカーでは問題発覚後、小林製薬との取引を停止。卸売先は紅こうじを扱うことに慎重になっているといい、「問題があるのは小林製薬のサプリで、他の紅こうじ原料は関係ない。これ以上、誤解が広がらないでほしい」とやりきれない思いを語った。

 小林製薬から紅こうじ原料を仕入れていた愛知県小牧市の製薬会社「山本漢方製薬」の吉田正敏顧問(64)は、小林製薬の対応を問題視。3月の問題発覚後、同社からの連絡は自主回収の協力依頼の1回だけで、その後はなしのつぶてだという。吉田さんは「健康食品に対する信頼は地に落ちた。死者数が増えるとさらに状況が厳しくなるのではないか」と案じた。

 別の取引先の60代男性も「国などの公的機関がもう少し積極的に介入した方がいいのではないか。(取引関係にある)業者としては事態を見守るしかない」と話した。

 リスクマネジメント論が専門の亀井克之・関西大教授は「3月以降、死者数が変動していなかったのに一気に増えれば驚いてしまう。把握方法を変えたことが理由というが、記者会見などで具体的な説明をしないと、消費者への責任を果たしたことにならない。命や健康に関わる問題はより丁寧にすべきで、企業の危機管理のあり方として疑問だ」と話した。【郡悠介、西本紗保美、松山文音、古川幸奈、東久保逸夫、戸田紗友莉】