ANA株総、芝田HD社長「一層の配当」SNS運営・株主優待券に厳しい声

AI要約

全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングスは、第79回株主総会を開催し、配当などの3議案を可決して閉会した。

株主からの質問では、株主優待運賃やSNS活用、国際線の機内食に関する意見が出された。

議案採決では、新たな取締役や監査役の選任が行われ、プラントベースのラーメン改良などが示唆された。

ANA株総、芝田HD社長「一層の配当」SNS運営・株主優待券に厳しい声

 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は6月27日、第79回株主総会を東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で開催し、1株50円とする配当(剰余金の処分)など3議案をすべて可決して閉会した。

◆株主優待運賃「本当に売っているのか」

 総会で議長を務めた芝田浩二社長は、5年ぶりとなった配当について「一層の配当水準の引き上げと株主還元を充実させたい」とあいさつした。芝田社長は昨年の総会で「配当を再開する条件は整いつつある」と、株主に早期復配を誓っていた。

 出席した株主は昨年より27人多い1067人で、質問者数は2人多い16人となり、所要時間は7分長い1時間55分だった。退場者は出なかった。

 株主からの質問では、株主優待券や特典航空券の使い勝手に関するものや、ANAが運営するSNSに対する意見が目立った。また、国際線の機内食で提供しているプラントベースのラーメンにも厳しい意見が出た。

 家族で帰省する際に株主優待券を使うため、ANAHDの株を買ったという株主は、航空券の販売開始と同時に予約サイトへアクセスしても、株主優待運賃が「満席」と表示されることから、「本当に売っているのかと疑問に感じた」と質問。別の株主からは、優待券の利便性低下を指摘する声もあった。

 発売直後にアクセスしても満席表示が出る点について、営業などを担当するANAの石井智二取締役執行役員が回答。「年末年始や旧盆は、小型機が就航している路線が発売と同時に売り切れ、ご不便をお掛けしている状況」と説明し、株主還元と収益性のバランスに理解を求めた。

◆メディア戦略に懐疑的

 ANAが運営するInstagramなどSNSの投稿内容について「他社は現地の食や風景を投稿しているが、ANAは客室乗務員やパイロット、アイドルと、人に焦点を当てているようだが、ターゲット層や思いを教えてほしい」との質問が出た。

 広報を担当する矢澤潤子取締役常務執行役員は「これまでリーチできなかった若者や海外の人に親しみを感じてもらえるよう、ツールを使い分けている。職業紹介は就活生からも大変好評だ」と回答した。

 矢澤常務の回答後、別の株主からは「今のANAのメディア戦略には懐疑的だ。YouTubeでは、日本航空(JAL/JL、9201)は動画の本数は少ないが再生回数が多い。ANAは回っているものと、そうでないものの差が大きい。若者はお金を持っていない。一番最初に乗った航空会社に乗り続けると思うので、初めて乗る客に焦点を当てた方が良いのではないか」との質問があった。

 前出の石井氏が再び回答。「若者をターゲットにSNSを展開しているが、若干力不足が否めない。SNSのみならず、いかに若い人たちや、初めて(航空会社を)利用する人にANAを利用頂けるかだ」として、「鬼滅の刃」や「ポケモン」とのコラボレーションを通して、子供たちから親へANA便に乗りたいと言ってもらえるようにしていると説明した。

 また、利用者からの意見が年間でどの程度寄せられるのかを尋ねる質問も、ほかの株主から出た。石井氏は「2023年度は約3万1000件のお客様の声をいただき、改善要望は6割だった。(件数にすると)2万件程度がお叱りや改善要望だった」と回答した。

 国際線ファーストクラスとビジネスクラスで、2022年12月から提供しているプラントベースのラーメンに対し、株主から厳しい意見が出たことについては、「麺の味がよろしくないとのご意見を多々頂戴している」と述べ、「おいしい麺を作れる業者を何件かピックアップしている」と、通常のラーメンに戻すのではなく、プラントベースとして改良する意向を示した。

   ◇

 質疑応答後の議案採決では、配当(剰余金の処分)、取締役11人と監査役2人を選任する3つの議案が原案通り可決した。このうち新任の取締役は3人で、人事・労政担当の直木敬陽専務とグループCFO(最高財務責任者)の中堀公博常務、ESG経営などを担う種家純氏が就任した。総会後は代表権を芝田社長と平澤寿一専務、直木専務の3人が持つ。また、監査役には福澤一郎氏と梶田恵美子氏が新たに就任した。