“素人集団”だったセブン-イレブン・ジャパンが成長し続けた理由とは?

AI要約

鈴木敏文氏と矢野博丈氏による対談から、アメリカ本社との難交渉を突破した奇策についてのエピソードが紹介されている。

鈴木氏が率を巡る交渉を打開するため、相手の立場で考えた提案をした結果、合意に至ったことが語られている。

自己の利益よりも相手のメリットを説明する姿勢が成功につながった事例を通じて、経営哲学が示唆されている。

 1970年代に「セブン-イレブン」を立ち上げ、業界ナンバーワンに育て上げた鈴木敏文氏。一方、「100円ショップダイソー」で100円ショップの草分けとなった大創産業の創業者である矢野博丈氏。小売業の新分野を切り拓いた2人は、大学の先輩・後輩であり、長年の親交があった。本連載では、『一生学べる仕事力大全』(藤尾秀昭監修/致知出版社)に掲載された対談「不可能を可能に変える経営哲学」から内容の一部を抜粋・再編集し、両氏によるビジネスと経営についての対話を紹介する。

 第3回は、アメリカ本社とのライセンスをめぐる交渉、セブン-イレブン1号店ができた当時の挑戦と苦労について振り返る。

■ アメリカ本社との難交渉を突破した奇策

 鈴木 まずはノウハウを取得しないことには始まらないので、アメリカの運営元であるサウスランド社と交渉に当たりましたが、非常に難儀しました。向こうはそもそも日本となんか提携する気がないので、吹っ掛けてくるわけですよ。1年に何百店舗出さなきゃいけないとか。で、最後の最後まで揉(も)めたのがロイヤリティの率です。

 向こうは売上高に対して1%のロイヤリティを取ると。カナダでも1%でやっているから、日本だけ例外を認めるわけにはいかないと言う。ただ、私は日本でやった場合にせいぜい2~3%しか利益は上がらないから、ロイヤリティを1%も出すわけにはいかない。0.5%だと主張する。互いに譲らず、ゴールが見えませんでした。

 矢野 その交渉をどうやってまとめていかれたのですか? 

 鈴木 どんなに巧(たく)みな話術を駆使しても、率をテーマにしている限りは解決できないと考えて、こう提案したんです。

 「提携によってあなた方のライセンス収入が大きくなることが本来の目的です。そのためには、我われが健全な経営をし、売上高を伸ばしていく必要があります。たとえロイヤリティの率を低くしても、日本で成功すれば最終的に額は上がっていきます。だから、率を上げるよりも額を上げるという考え方をしてはいかがですか」

 ライセンス収入:著作物や商標の権利を持つ側(ライセンサー)が、その使用を第三者(ライセンシー)に許可することで得る利益。

 そうやって自分たちの利益や言い分を前面に押し出すのではなく、相手の立場で考え、相手のメリットを説くようにしたことで、結局サウスランド社が大きく譲歩し、0.6%で合意に至りました。

 矢野 相手の立場で考えた提案をしたから説得できたと。