日本株に4.9兆円の火種、信用買い残18年ぶり高水準-相場かく乱警戒

AI要約

日本株市場では、個人投資家が強気の姿勢を崩さず、信用買い残が18年ぶりの高水準に達している。

信用買い残は過去20年で見ても歴史的な高水準となっており、株価の上下いずれの方向に振れても反対売買が行われる可能性が高い。

日銀による追加利上げの可能性も考慮しながら、投資家はコストアップのリスクに直面している。

(ブルームバーグ): 日経平均株価が史上最高値を更新した後、足踏みが続く日本株市場で個人投資家は強気の姿勢を崩さず、信用買い残は18年ぶりの高水準にまで積み上がっている。今後株価が上下いずれの方向に振れても反対売買が行われることは必至で、相場をかく乱する新たな火種となってきた。

東京証券取引所によると、信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は21日時点で4兆9118億円と3週連続で増え、2006年6月以来の水準に達した。日経平均は3月22日の最高値から5.6%程度下げた中、信用買い残は16%増えており、先行きの値上がりを期待した個人が下落局面で買いを入れた格好だ。

信用買いは投資家が証券会社に一定の委託証拠金を預け、証券会社から資金を借りて株式を購入する取引で、借りた資金はいずれ返済し、買いポジション(持ち高)も閉じる必要がある。一方、信用売り残高は長期にわたり6000億円台から1兆円台の間で一進一退が続いており、信用買い残を信用売り残で割った信用倍率は6倍超と、過去20年で見ても歴史的な高水準となっている。

楽天経済研究所の土信田雅之シニアマーケットアナリストは、株価の上昇局面では信用買い残の利益確定売りが上値を抑える半面、下がれば買い残が一気に整理されると指摘。加えて売り残が少なく、売り方の買い戻しも期待できないと言う。「市場では第1四半期決算での上方修正期待があるとみられるが、上方修正が目立たないとなると注意が必要」と土信田氏は述べた。

信用取引の中でも半分以上を占める制度信用取引では通常、建玉を決済する期限は取引開始から6カ月後だ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、信用買い残が今年に入ってから積み上がっていたため、今後9月にかけ反対売買が出る可能性があるとみている。

コストアップの可能性

さらに、3月に17年ぶりに政策金利を引き上げた日本銀行が早ければ7月にも追加利上げを行う可能性がある点も信用取引にとってはマイナス要素だ。日銀が短期金利の誘導目標を引き上げた場合、信用買いを行う投資家が証券会社などに支払う金利も上がる可能性が高く、長年ゼロ金利下で取引してきた投資家にとっては思わぬコストアップにつながる可能性は否定できない。