ウクライナもらってくれ!? 南米の大国が供与表明の“虎の子”攻撃機 ホントに使えるの?

AI要約

アルゼンチンがウクライナに戦闘機を供与する意向が報じられ、その機種はフォークランド戦争でイギリス海軍を撃沈した伝説的な攻撃機「シュペル・エタンダール」だという驚愕のニュース。

「シュペル・エタンダール」の過去の戦果や現在の能力、ウクライナへの供与を考える際の課題について探ると、有用な兵器ではあるものの課題が多いことが明らかになる。

ウクライナ空軍にはすでに他の戦闘機が供与される予定であり、増強のために「シュペル・エタンダール」を導入するコストや整備、トレーニングの負担は大きい。

ウクライナもらってくれ!? 南米の大国が供与表明の“虎の子”攻撃機 ホントに使えるの?

 アルゼンチンがウクライナへ戦闘機を供与する意向だという信じられないようなニュースが2024年6月11日、報じられました。しかもその機種は、かつてフォークランド戦争(アルゼンチン側呼称、マルビナス戦争)でイギリス海軍を震撼させた伝説的な攻撃機、フランスのダッソー社製「シュペル・エタンダール」だというのです。

 この情報は、アルゼンチンメディア「Infobae」が最初に報じました。報道によると、ハビエル・ミレイ大統領がウクライナ支援計画を承認し、そのなかに「シュペル・エタンダール」の供与が含まれていたのだとか。しかし、アルゼンチン政府はこの件について公式に言及しておらず、真偽は不明のままとなっています。

 アルゼンチン海軍の「シュペル・エタンダール」は前述の通り、1982年のフォークランド戦争で歴史に残る大戦果をあげたことで知られます。当時アルゼンチン海軍が保有していた「シュペル・エタンダール」はわずか5機しかなかったにも関わらず、イギリス海軍の新型駆逐艦「シェフィールド」およびコンテナ船「アトランティックコンベイアー」を、新型(当時)の空対艦ミサイル「エグゾセ」で撃沈しています。

 このときアルゼンチンは「エグゾセ」もわずか5発しか保有しておらず、もし同国海軍が十分な数の「シュペル・エタンダール」と「エグゾセ」を取得できていたならば、イギリス海軍はさらなる被害に悩まされることになっていたかもしれません。

 2022年4月14日のロシア海軍黒海艦隊旗艦・巡洋艦「モスクワ」がウクライナ軍の地対艦ミサイル「ネプチューン」によって撃沈された一件からみるに、「シュペル・エタンダール」と「エグゾセ」の組み合わせは現在も有効な兵器だと言えるでしょう。

 また対地攻撃に関しても、「シュペル・エタンダール」は赤外線前方監視装置を搭載し、レーザー誘導爆弾による夜間精密爆撃も可能であるため、近代的な攻撃機としての能力も備えています。さらに空対空ミサイル「マジック」を搭載できるため、正面切って戦闘機をやりあうことこそ不可能であるもののドローン迎撃ぐらいであれば十分すぎる能力をもっています。

 このように見てみると、「シュペル・エタンダール」は極めて古い亜音速攻撃機ですが、使い方次第では戦力として有用なようです。しかし、ウクライナへ意義のある供与を行うためには、いくつか問題があります。

 まず、2024年6月現在アルゼンチン海軍が保有する「シュペル・エタンダール」は2019年に調達したフランス海軍の中古機5機しかないという点です。

 ウクライナ空軍には、すでにF-16と「ミラージュ2000」戦闘機を各国合わせて約120機供与することが決定しており、わずか数%の増強のために整備やトレーニングのための新たな体制を作り上げる負担を受け入れることは、コストパフォーマンスを鑑みると、あまり良いとはいえません。

 また、保有する5機は飛行可能な状態にありません。これは機体の問題ではなく「シュペル・エタンダール」の射出座席がイギリス製であることに起因するものです。