3年ぶりの党首討論開催:野党党首らの解散・総選挙、内閣総辞職要求を岸田首相は拒否

AI要約

19日に行われた党首討論では、岸田首相が野党の要求を拒否し解散総選挙を実施しない方針を示した。政治資金規正法の成立に関する議論や経済政策についても平行線が続いた。

党首討論で、立憲民主党や日本維新の会などの野党から岸田首相に解散総選挙を求める意見が寄せられたが、首相は各課題に取り組んで結果を出すことを強調し解散を拒否。

政治資金規正法成立に関する議論や経済政策、夫婦別姓制度、憲法改正についても党首間で対立が続いた。

3年ぶりの党首討論開催:野党党首らの解散・総選挙、内閣総辞職要求を岸田首相は拒否

与野党の党首が一対一で論戦を展開する党首討論が19日、国会で行われた。開催は菅政権下の2021年6月以来3年ぶりであり、岸田政権の下では初めてだった。

2012年11月の党首討論では、与党・民主党の野田首相が野党・自民党の安倍総裁に迫られ、議員定数削減の確約を条件に「衆院を解散してもいい」と言い切り、解散を明言した。しかし今回は、このような政治を動かす党首討論とはならなかった。岸田首相は、解散総選挙、内閣総辞職、国会会期延長などの野党党首らの要求をすべて撥ねつけた。

立憲民主党の泉代表は、政治資金報告書の虚偽記載問題で、岸田首相は自らを処分せず、審判を下すのは国民だ、と述べたことを指摘し、改正政治資金規正法が19日に成立したこのタイミングで、国民に信を問うために衆院を解散すべきと首相に迫った。日本維新の会の馬場代表も岸田内閣は万策尽きたとし、責任をもって政治運営できる首相に道を譲ってほしいと述べた。

これに対して岸田首相は、先送りできない課題が山積する中、それに一つ一つ取り組むべき、また結果を出すことに全力を尽くすとし、解散総選挙の実施を拒否した。

国民民主党の玉木代表は、岸田首相は既に「四面楚歌」の状況にあるとし、職を辞してリーダーとしての責任をとるべきと主張したが、岸田首相はやはり「結論を出すことに専念する」として、これを拒否したのである。

野党党首からは、同日に参院で可決成立した改正政治資金規正法への批判が相次いだ。立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党は、政策活動費の透明化や国会議員の監督責任強化が不十分として同法案に反対した。

思い切った改革にならなかった、自民党は引き続き裏金で選挙や政治活動をしようとしているのか、との立憲民主党・泉代表の批判に対して岸田首相は、政治資金に関する透明正常化についての国民の期待と、議員のプライバシーと政治活動の自由度とのバランスで考えたもの、と説明した。さらに、政策活動費などの政治資金を引き続き確保することの必要性として、「それがないと政治家を志す若者が出てこなくなる」と主張した。これは、麻生副総裁の発言とも重なるが、これに対して泉代表は、「政治には金がかかる、自分には金を集める自信がないから政治に関心があっても政治家を志さない若者が多いのではないか」と述べた。これはもっともな指摘である。

自民党が政治資金の確保に執着するほど、自民党の勢力の源泉は政策遂行能力ではなく、資金力にあるのではないかとの疑念が国民の間に広がることになるのではないか(コラム「改正政治資金規正法が成立」、2024年6月19日)。

党首討論では、経済政策は大きな論点とならなかったが、岸田首相は、春闘での高い賃上げの実現は政府の取り組みの成果とアピールしたのに対し、立憲民主党の泉代表は、実質賃金が依然としてプラスになっていない点を指摘した。さらに、実質賃金の目減りにもつながる電気ガス補助金の廃止について政府の対応を批判した。これに対して、岸田首相は、国民生活を守ることと適切なエネルギー政策のバランスのなかで電気ガス補助金の廃止を決めた、との説明にとどめた。

これ以外に、夫婦別姓制度や憲法改正についても議論がなされたが、いずれも議論は平行線に終わった。

木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト)

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この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。