賃上げ実感なし?「暮らし向き変わらない」人6割 野村総研調査

AI要約

賃上げの動きが広がる中、実際に収入が増加した人たちの多くが、今後の暮らし向きについてポジティブな見方をしていないことが明らかになった。

賃上げで収入が増えた人の半数以上が今後の暮らし向きが変わらないと認識し、モチベーションは上がる傾向にある一方で、予定がない人は正規雇用者よりも非正規雇用者が多く、業種や従業員数によっても賃上げ予定の差がある。

政府の「成長と賃金の好循環」を実現するためには、一過性ではなく長期的に賃上げの効果を実感できることが重要だと指摘されている。

賃上げ実感なし?「暮らし向き変わらない」人6割 野村総研調査

 賃上げでも暮らし向きは変わらない――。人手不足や物価高を背景に賃上げの動きが広がっている。だが、実際に賃上げで収入が増加した人たちの多くが、今後の暮らし向きについてポジティブな見方をしていないことが野村総合研究所の調査で明らかになった。

 調査は2024年5月7~8日、インターネットで実施し、20~59歳の男女2680人から回答を得た。24年1月1日から調査時点までの4カ月あまりの間に、勤務先の賃上げで収入が増えたと回答した人は33・3%。24年中に賃上げにより収入が増加する予定の人を合わせると45・4%だった。逆に、24年中に収入が増える予定がない人も54・6%にのぼった。

 賃上げで収入が増えた人に、今後の暮らし向きが良くなると思うかを尋ねたところ、58・6%が「変わらない」と回答。「良くなる」と「やや良くなる」を合わせた36・7%を20ポイント以上上回った。働くモチベーションについては、上がった(「上がった」と「やや上がった」の合計)が53・5%で、半数を超えた。

 一方で、24年中に賃上げで収入が増加する予定がない人は、正規雇用者が44・4%だったのに対し、非正規雇用者は69・7%と高い割合だった。従業員数が少ない企業に勤める人ほど賃上げ予定がない割合が高く、業種別ではサービス業で高い傾向がみられた。

 野村総研未来創発センターの武田佳奈氏は「政府が目指す『成長と賃金の好循環』を実現できるかどうかは、どれだけ多くの人が一過性ではなく長期的に、賃上げによる収入増加の実感を得られるかにかかっている」としている。【後藤豪】