物流危機の今、なぜ「ダブル連結トラック」が注目されるのか? “2台分輸送可能”だけじゃないその実力、しかし「駐車場不足」という大問題も

AI要約

鴻池運輸とNLJがダブル連結トラックを運転し、中継輸送を始めた

ダブル連結トラックの特徴や条件、運行可能区間などについて

条件を満たしたダブル連結トラックは、特定の道路でのみ運行可能

物流危機の今、なぜ「ダブル連結トラック」が注目されるのか? “2台分輸送可能”だけじゃないその実力、しかし「駐車場不足」という大問題も

 2024年5月21日、鴻池運輸(大阪市)とネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ、東京都新宿区)は、ダブル連結トラックの出発式を実施した。鴻池運輸は、これまでもNLJが展開するダブル連結トラックを用いた共同配送スキームに賛同し、事業パートナーとして参画してきた。しかし、鴻池運輸がダブル連結トラックを導入し、自社拠点間の輸送(群馬県邑楽〈おうら〉郡~京都府城陽市)を行うのは初めてである。

 鴻池運輸では、まずは2台のダブル連結トラックを運行する。京都府および群馬県を出発したドライバーは、新東名高速道路の清水PA(静岡県静岡市)で待ち合わせを行い、乗車するトラックを交換してから、それぞれ出発地に戻る。これによって、今までは1泊2日の行程で働いていたドライバーは、毎日帰宅することができるようになる。この中継輸送を実現するメリットは大きくふたつある。

・拘束時間の短縮効果

・宿泊をともなった運行が多いため、どうしても仕事にプライベートを侵食されてしまう長距離ドライバーの待遇改善・働き方改革に貢献

 鴻池運輸は、2024年6月には今度は静岡県内から東西方向に運行するダブル連結トラックを増便し、以降もダブル連結トラックの増便を図っていくという。

 ダブル連結トラックは、大型トラックにさらに大型トラック相当のトレーラーをけん引することで、大型トラック2台分相当の貨物輸送をひとりのドライバーが輸送することを実現した全長25mのトラックである。

 ダブル連結トラックの発祥は、2019年にさかのぼる。それまでのフルトレーラー連結車の車両長は21mまでだったが、2019年1月 、全長25mのダブル連結トラックの新東名高速道路(海老名JCT~豊田JCT)における通行が許可されたのだ。

 ダブル連結トラックを運用する際には、以下六つの条件 を満たす必要がある。以下、専門用語を廃し、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)が平易に書き下した。

1.車両はトラクタ(けん引する側の車両)、トレーラー(けん引される側の車両)とも、バン型(車両フレームに固定された箱型)であること。

2.走行できる区間は、高速道路を中心とした特定区間中心。一般道などを走る場合は必要最小限にしなければならず、かつ事前申請が必要。

3.アンチロックブレーキシステム(ABS)、衝突被害軽減ブレーキなどの運転支援装置から、業務支援用自動料金収受システム(ETC)2.0車載器、「車両の長さ」と「追い越し注意」の文言を表示するプレートまで、16項目の装備を装着すること。

4.危険物、大量の液体、動物の輸送は禁止。

5.大型トラック運転業務への従事経験年数とけん引免許の保有年数に加え、ダブル連結トラック運転に関する訓練を行ったドライバーでなければ運行できない。

6.「追い越しの禁止」「(ダブル連結トラック同士の)縦列走行の禁止」など、5項目の車両運行時ルールの順守。

「2」に記されているように、ダブル連結トラックはどこでも好きなように走ることはできない。走ることができるのは、

「あらかじめ許可を得た道路」

だけだ。ただし、運行可能区間に関していえば、2022年11月、それまでの2050kmから5140kmまで大幅に拡大されている。