【日本物流における内航海運の位置づけ】2024年問題の解決へどれだけ寄与するか、データで徹底検証

AI要約

2024年問題とは、物流において鉄道輸送や内航海運へのモーダルシフトが必要とされている課題であり、現在の状況や課題解決の厳しさが指摘されている。

日本の物流における内航海運の実態について、国土交通省の調査データをもとに紹介し、トラック輸送との比較から内航海運の現状を明らかにしている。

「2024年問題」を解決するために倍増を目指す国の提案にも疑問が示され、内航海運の貢献度が十分であるか疑問視されている。

【日本物流における内航海運の位置づけ】2024年問題の解決へどれだけ寄与するか、データで徹底検証

 筆者は、Wedge2024年4月号のWEDGE REPORT「『2024年問題』いよいよ本格化へ」、Wedge ONLINE の3月19日「<生活直撃の危機>日本の物流クラッシュ寸前!『2024年問題』本格化で一体何が起こるのか?」および4月1日「【いよいよ今日から】『物流2024年問題』解決のカギ握る救世主とは?鉄道貨物・内航海運への『モーダルシフト』をどう進めるのか」で、「物流の2024年問題」(以下、「2024年問題」)の特効薬と考えられている鉄道輸送や内航海運へのモーダルシフトについては、即効性を求めるのではなく、中長期的に対応していく必要があると指摘させて頂いた。

 しかしながらその後も、一部にはモーダルシフトがなかなか進まないことを指摘する報道がある一方で、依然として鉄道輸送や内航海運へのモーダルシフトを加速させる荷主企業や物流企業に関する報道が少なからず見られる。読者の中にも何が現実なのか分かり難いと考えておられる方も多いのではないかと思われる。

 そこで今回から数回に亘って、将来の物流戦略を立てるに当たって把握して置くべき、日本の内航海運と鉄道輸送の位置づけと実態に関する客観的情報を提供する。内航海運と鉄道輸送がどのようにモーダルシフトの受け皿となることができるのかについて述べていくこととしたい。

 初回の今回は、これまでにも触れてきた日本の物流における内航海運の位置づけと実態につき、より深掘りをしてみることとする。

 国土交通省では、全国的な貨物の出発地から到着地までの経路などを把握することを主たる目的として、1970年以来5年ごとに「全国貨物純流動調査」(通称:物流センサス)を実施している。同調査では、1年間における貨物の出入荷(概要)に関する「年間輸送傾向調査」と3日間における貨物の出荷(詳細)に関する「3日間流動調査」という2種類の調査が実施されている。

 新型コロナウィルスの感染拡大により1年遅れで実施された2021年の「3日間流動調査」をもとに各輸送モードの分担率を算出してみたところ、下図が示す通り、トラックが81.29%、海運が11.70%、鉄道が1.32%、航空が0.01%であった。

 物流関係の読者の方はご存じと思われるが、一口に海運輸送と言っても、トラック輸送からのモーダルシフトの主たる受け皿となるのは、梱包せずに大量にそのまま輸送するドライバルク船(石炭や穀物などの資源)・リキッドバルク船(液体)・ブレークバルク船(建設機械や鉄道、鉄骨など)による「ばら積み輸送」ではなく、RORO船(貨物をトレーラーごと運ぶ船で、貨物を載せたトレーラーが自走して積み込まれる)やコンテナ船(国際規格の海上コンテナを専門に運ぶ船)、そしてカーフェリー(河川,海峡,内海などで隔てられた2地点を運ぶ船)による輸送である。

 そこで、海運輸送の内訳を見ると、海運輸送全体に占めるRORO船の割合がわずか3.78%、コンテナ船の割合に至っては0.24%に過ぎないことが見て取れる。また、分類上トラック輸送に含まれるフェリー輸送がトラック輸送全体に占める割合は0.76%に過ぎないことも見て取れる。

 この三つの輸送モードの分担率を全ての輸送モードの中に含めて計算し直してみると、下表の通り当該3モード合計でも1%を若干超える程度に過ぎないのである。

 「2024年問題」の対策として国がまとめた「物流革新緊急パッケージ」においては、「鉄道(コンテナ貨物)、内航(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増」をめざすとされているが、フェリー輸送を含めても1%強に過ぎない内航海運輸送の分担率を倍増させたとしても、トラック輸送貨物の14%強が運べなくなる可能性さえ予想されている「2024年問題」の解決にどれほど貢献できるのか、疑問に感じるのは筆者だけであろうか。