トランプ氏有罪評決、政治的迫害の訴えに中ロが同調-民主主義を批判

AI要約

中国とロシアのコメンテーターがトランプ前米大統領の有罪評決に対し批判を行い、米国の民主主義の失敗を指摘。トランプ支持者の再びの議事堂襲撃や内戦の可能性に懸念が高まる中、世界の注目を集めている。

民主主義の後退や民衆の意識の変化が進んでおり、独裁国家が民主主義国家を抜く状況も発生。各国における政治形態への意識が変化していることが報告されている。

米国の民主主義の強さよりも、ロシアや中国の侵略に対する確約を求める国々が増加。信頼できる選択肢が限られている状況から、米国の指導者の行動が国際的な重要性を持つ。

トランプ氏有罪評決、政治的迫害の訴えに中ロが同調-民主主義を批判

(ブルームバーグ): トランプ前米大統領に有罪評決が下された先週、中国とロシアのコメンテーターは即座に米国の民主主義の失敗だと断じた。

中国のソーシャルメディア上では、ユーザーがトランプ氏の支持者らに再び米議会議事堂を襲撃するよう呼びかけ、内戦に発展する恐れがあると警告した。中国国営中央テレビ(CCTV)は11月の米大統領選を「茶番」と一蹴。ロシア大統領府のペスコフ報道官はトランプ氏が「合法か非合法かを問わずありとあらゆる手段」で迫害されているのを「全世界」が目にしていると述べた。

もっとも、ロシアと中国はかねて、米国の制度を非難してきた。だが、両国の主張は、米共和党議員らの言い分とも重なる。共和党幹部ですら、今回の裁判を「司法制度の武器化」と表現。これに対抗して、民主党員を裁判にかけてみせるとの声も上がる。トランプ氏は「選挙を妨害するための不正な裁判で有罪評決を受けた」とし、政治的な迫害だと主張する。

米大統領選を数カ月後に控えたタイミングで下されたトランプ氏への有罪評決は、世界に影響を与える。民主主義を守る砦(とりで)として振る舞う米国は、その真価が再び問われることになるだろう。大統領経験者に対する有罪評決は米国では異例だが、ブラジル、イスラエル、韓国、イタリア、フランスなど他の民主主義国家では、これまで元指導者が裁判にかけられている。

スウェーデンの独立調査機関V-Dem研究所のデータによると、過去15年間で、世界の人口に占める割合で独裁国家が民主主義国家を抜いた。とりわけ東欧とアジア諸国の一部で民主主義が著しく後退した。

米ピュー・リサーチ・センターの2月の報告書は、調査対象とした22カ国の半数で、統治形態として議会制民主主義が非常に良いと考える人の割合が2017年以降減っていることを明らかにした。

だが、ウクライナや台湾、フィリピン、バルカン諸国の政府にとっての懸念は、米国の民主主義がどれほど強いかよりも、むしろトランプ氏を含め米国の指導者がロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席による侵略から守るとの確約を提供してくれるかどうかだろう。他に信頼できる選択肢がないという純然たる事実があるためだ。