物流TOB合戦は佐川の「異次元の高値買収」で決着へ、株式市場からは厳しい評価、巨額買収の果実は?

AI要約

物流業界で起こった「同意なき買収」に異次元の高値を提示する対抗馬が現れた。

宅配便大手・佐川急便を擁するSGホールディングスが低温食品物流企業C&Fロジホールディングスを1237億円で買収を目指しTOBを開始。

C&Fは既存提案に不満を持ち、最終的にSGHDの高値オファーを受諾する。

物流TOB合戦は佐川の「異次元の高値買収」で決着へ、株式市場からは厳しい評価、巨額買収の果実は?

 物流業界で起こった「同意なき買収」に、異次元の高値を提示する対抗馬が現れた。

 5月31日、宅配便大手・佐川急便を擁するSGホールディングス(SGHD)は低温食品物流を手がけるC&Fロジホールディングスに対し、1株5740円で株式公開買い付け(TOB)を開始すると発表した。期間は6月3日から7月12日まで。完全子会社化を目的としており、買収額は1237億円の見通し。C&FはTOBに賛同している。

 C&Fに対しては、小売業向けに3PL(倉庫業務から配送まで物流の一括受託)を展開するAZ‐COM丸和ホールディングス(丸和HD)が1株3000円でTOBを実施している最中だった。丸和HDがC&Fの同意を得ずにTOBに踏み切ったため、業界内外から注目されてきた同意なき買収。SGHDが圧倒的な高値で名乗りを上げた。

■SGの提案は渡りに船

 まず、C&FはSGHDから最高のオファーを獲得したと言える。2015年の上場以来、C&Fの株価は2000円を下回る推移だった。丸和HDが3月に買収の意向を示すまで3000円台をつけたことはなく、業績も明確に成長できているとは言いがたい推移だ。そこに1株5740円という高い評価がついた。

 丸和HDの提案も十分なプレミアムを付けたものだったが、C&Fは前向きではなかった。丸和HDとは以前から経営統合を含めた協議を行ってきたが、2023年10月にシナジーが限定的なこと、企業文化が異なる点などを理由に検討を中止。にもかかわらず、2024年3月に丸和HDがTOBの意向を発表し、5月に実施したわけだ。

 C&Fの綾宏將(あや・ひろまさ)社長は会見で「(丸和HDの提案に対して)最初からネガティブだったわけではない」と語ったが、当初から可能な限り、ほかの提携相手を模索していたのが本音のようだ。C&Fには事業会社とファンドなど最終的に4社の提案が寄せられ、検討してきた。

 綾社長は同日開かれた会見で「SGHDの提案がもっとも高額で優れていると考えるようになった。営業体制や顧客基盤の活用、低温物流の効率化、国際物流の強化、メディカル分野の拡大。物流2024年問題への対応にも寄与する。主要顧客が離反する可能性も低い」とシナジーを強調した。