NATO非公式外相会合、ウクライナの越境攻撃を大多数が支持 ハリコフの戦局転換に期待

AI要約

ウクライナが欧米から供与された兵器でロシア領内を攻撃することに大多数のNATO加盟国が支持を表明し、ウクライナの勝利に向けた後押しを強めた。

加盟国がロシアへの越境攻撃を容認するよう要請し、バイデン米政権やドイツも攻撃容認に転じる中、ウクライナが攻勢を押し返す機会が生まれつつある。

NATO加盟国がウクライナに対する支援を強化し、スウェーデンやチェコが新たな兵器や資金を提供する動きが広がっている。

【プラハ=黒瀬悦成】チェコのプラハで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)非公式外相会合は最終日の31日、ウクライナが欧米から供与された兵器でロシア領内を攻撃することに大多数の加盟国が支持を表明し、ウクライナの勝利に向けた後押しを一層強めることを確認した。

ロシアは、国境に近いウクライナ北東部の都市ハリコフに対して自国の領内からミサイルによる越境攻撃を行うなどして攻勢を強めている。だが、加盟国の多くがこれまで、自国製の兵器でロシア領内を攻撃しないようウクライナに制約を課してきたため、同国は有効な反撃ができず、守勢に立たされている。

ストルテンベルグ事務総長は5月30日、プラハでの演説で、制約を「見直す時機が来た」と述べ、加盟国にロシアへの越境攻撃を容認するよう要請した。

米政治紙ポリティコは30日、越境攻撃に慎重だったバイデン米政権がハリコフ周辺地域に限定してウクライナの越境攻撃を非公式に容認したと伝えた。ブリンケン米国務長官も29日、容認の判断は現地の情勢に「適合させる」と述べ、容認姿勢への転換を示唆した。米国とともに慎重姿勢を維持してきたドイツも攻撃容認に転じつつある。

NATOは組織としてはウクライナに兵器を供与しておらず、越境攻撃の容認の是非は供与した各国の判断となる。イタリアのタヤーニ外相は31日、「伊製兵器を越境攻撃に使わせることは憲法の制約上できない」としたものの、加盟国の大勢が容認姿勢を打ち出したことで、ウクライナがロシアの攻勢を押し戻す転機となることが期待される。

また、スウェーデンは会合に合わせ、ウクライナ空軍によるF16戦闘機の将来的な運用を視野に、効果的な戦闘を可能にする早期警戒機サーブ340の供与を表明。チェコも弾薬50万発分に相当する16億ユーロ(約2710億円)の拠出を明らかにした。ロイター通信によると、ストルテンベルグ氏は現状の軍事支援の水準を維持するため、加盟国全体で毎年少なくとも計400億ユーロ(約6兆8千億円)を拠出するよう求めた。