中国とインドが安全保障の要衝スリランカの港で「冷戦」 インド諜報要員を中国が監視か

AI要約

スリランカ南部のハンバントタ港は、中国からの借金で整備されたが、運営権を中国に譲渡する「債務の罠」の典型例となっている。地域大国インドは、港が軍事利用される可能性を懸念し、港で中国とインドの間で対立が起きている。

港ではインドの油田探査船やセメント船が停泊し、インドの要員が活動している。中国側はこれらの要員を警戒し、監視活動を行っている。

スリランカは対外債務に苦しむ中、中国から圧力を受けている状況であり、将来、港が軍事利用されればインドにとって安全保障上の脅威となる可能性がある。

中国とインドが安全保障の要衝スリランカの港で「冷戦」 インド諜報要員を中国が監視か

スリランカ南部のハンバントタ港は、スリランカが中国からの借金で整備したものの、返済が滞り、運営権を中国に譲り渡す結果となった「債務の罠(わな)」の典型例といわれる。中国との領土問題を抱える地域大国インドが、港が中国に軍事利用されるのではないかと懸念を募らせる中、港では中国とインドの間で「冷戦」ともいえる静かな対立が起きていた。

ハンバントタ港は厳重に警備され、許可なく立ち入ることができないが、最近までの状況をよく知るスリランカ政府元職員が19日までに明らかにしたところでは、2年以上もインドの油田探査船が港に停泊したままになっており、乗組員の中にはインド海軍の元軍人がいた。元軍人は「次に向かう運航先の指示を待っている」と話していたが、インド政府が送り込んだ港の状況を監視する要員の疑いがあったという。

また、セメント船を清掃する人員を乗せたインド船が停泊し、インド人労働者が乗船していてインドの対外諜報機関、調査分析局(RAW)の要員とみられる人物が混じっていた。

中国側はこうした人物を警戒し、監視カメラや無人機(ドローン)を駆使したり、尾行したりしていた。港の管理会社は中国とスリランカの合弁だが、主要な管理職は中国人で占められ、元職員は「その中に中国人民解放軍の人員がいたことは100%間違いない」と話した。

スリランカは、アジアと中東・アフリカの中間に位置するシーレーン上の戦略的要衝で、ハンバントタ港では、往来する船舶が燃料や物資の補給を行っている。中国の調査船が約2年前に入港した際にはインドが「スパイ船だ」と反発し、その後、スリランカは来年1月までの1年間、外国調査船の活動を認めない措置を取った。

対外債務に苦しむスリランカは、最大の債権国である中国から調査船活動の再開を含む港の有効利用に向けて圧力を受けているとみられ、将来、港が軍事利用されれば、インドにとっては安全保障上の脅威となる。このため、インドは港の状況を監視する体制を取っている可能性がある。

一方、ハンバントタ港近くには、米フォーブス誌に「世界で最も空いている空港」と揶揄(やゆ)されたマッタラ・ラジャパクサ国際空港がある。「旅客便が最近到着したのは5月11日」(空港関係者)という閑散とした空の玄関口は、この地が故郷のラジャパクサ元大統領が中国からの巨額の資金を得て建設した。港と同様、中国に運営権が渡るのではとの見方もあったが、スリランカはインドとロシアの合弁企業に運営を委ねることを決めている。インド側企業関係者は20日、「今月中だろう」と明らかにした。