米国のテック界隈で増殖する「出生主義者」たち 彼らはなぜ「より多くの子供を持つこと」を推すのか?

AI要約

米国のテクノロジー界で増殖する「出生主義者」とは、マスクやアルトマンなどが支持する考えで、出生率の増加が文明の維持や進歩に重要だと主張している。

出生主義者は宗教的ではなくデータに基づき、合理性を重視した存在であり、子供の名前選びなども合理性を重視している。出生率の低下は地球温暖化よりも文明にとって大きな脅威だとする警告に賛同している。

出生主義のイデオロギーには、民族的多様性、女性の権利など5つの要素があり、一部は多元主義と人種差別主義との違いを強調している。

米国のテック界隈で増殖する「出生主義者」たち 彼らはなぜ「より多くの子供を持つこと」を推すのか?

より多くの子供を持つことの重要性を主張する「出生主義者」が、米国の特にテクノロジー界で増殖している。イーロン・マスクやサム・アルトマンなどの著名人も、この思想を支持していることで知られている。

彼らはマスクの「出生率の低下は地球温暖化よりも文明にとって大きな脅威である」との警告に賛同し、英紙「ガーディアン」によれば、「出生率の増加が人類の文明を維持し、進歩させるために不可欠だと信じている人たち」だ。

また、そのアプローチは、「子は神が与えし恵」と考えるキリスト教など宗教的なものではなく、徹底的にデータに基づき、合理性を重視した「効果的な利他主義(根拠と理性を使って、何が大多数の他人のためになるかを考え、それに基づいて行動する)」の運動だと主張する。

同紙は、プロナタリスト(出生主義者)財団の創設者でこの運動の実践および代表者を務める、米ペンシルバニア州在住のコリンズ夫妻に取材をしている。30代のミレニアル世代の夫妻の間には体外受精による3人の子供がおり、現在妻は4人目を妊娠中だ。

子供の名前はオクタヴィアン、トルステン、ティタン、インダストリー。全員「性別に中立的な名前」である。特にこのような名前を持つ女児は、過去のデータによれば「高収入のキャリアに就き、STEM学位を取得する可能性が高くなる」と述べている。

夫妻によれば、現在の平均的な出生主義者は「若くて、オタクで、逆張りで、自閉症」。妻のシモーネ自身、自閉症を公言しており、この運動の参加者の「約3分の1」がそうだという。

「彼らの多くは、テック系の会社を経営しているか、ベンチャーキャピタルに所属しているでしょう」

さらに、彼らは自分たちの政治観を「ニューライト(新保守)」と呼び、「トランプがいなくなったら、私たちの保守思想の広がりが右派を支配するようになる」と述べている。

そんな彼らの説明によれば、出生主義のイデオロギーには大きく5つの重要な要素がある。

ひとつは「民族的多様性と多元主義」。

夫のマルコム(37)は、出生主義とは多元主義(宗教・人種・性別・性的指向などを尊重)のことだと主張する。

「すべての民族の出生率の向上を支援している。なぜなら、人類は文化の進化によって進歩するからだ。そのために文化的な多様性は必須です」

ただ一部の出生主義者は、白人至上主義者とプラットフォームを共有しているのも事実だ。これについて、彼は「多元主義の利点を裏付けるデータを示すことで、人種差別主義者の改宗に注力している」と述べている。

二つ目は「女性の権利」。

彼らは出生率の低下は女性の権利を損なう可能性があると強調している。

出生率の低下は、労働力の減少、経済衰退につながり、ひいては雇用機会、賃金上昇率、雇用の安定性においても女性の権利に悪影響を与えかねないという。中絶に関しても、彼らは保守派でありながらも反対はしておらず、あくまでも、女性の選択肢を増やし、維持するための運動だと主張する。そして、産休制度よりも柔軟な労働条件にフォーカスすべきだと提唱している。