HIVが拡大する国、伝わらなかった言葉「命を大事に」…だから北沢豪はサッカーを「利用した」

AI要約

元日本代表で日本障がい者サッカー連盟会長の北沢豪さんが、サッカーを通じた多様性や共生社会の実現について語る。

アジアやアフリカを訪れ、サッカーを通じた啓発活動や交流を行ってきた北沢さんの取り組みについて紹介。

サッカーが異なる文化や言語を超えて人々を結びつけ、理解を深める力を持つことを示唆。

 サッカー元日本代表で日本障がい者サッカー連盟会長の北沢豪さんが読売新聞ポッドキャスト「ピッチサイド 日本サッカーここだけの話」に出演した。サッカーを通じた多様性や共生社会の実現に向けた取り組みについて語り、「10年後、20年後、30年後を考えて行動しない限りは変わらない」と訴えた。

 日韓ワールドカップ(W杯)を翌年に控えた2001年に、北沢さんは日本サッカー協会の依頼でカンボジアを訪問した。当時のカンボジアは1991年に終結した内戦の爪痕がまだ色濃く残っていたという。

 「笑顔がない状況。今の時代、こんな国があるのかと思うぐらいだった」

 「ワールドカップをアジアで初めて開催する『レガシー』ですよね。アジアに向けて日本は何ができているのだろうかということで、普及活動だとか、サッカーで協力したいという思いは強まった」。そこから途上国の人たちとサッカーを通じた交流が始まった。

 2003年には国際協力機構(JICA)の要請でアフリカのザンビアを訪れた。当時、ザンビアではエイズウイルス(HIV)の感染拡大が社会問題になっていた。サッカー教室をきっかけにHIVの検査につなげる啓発活動が目的だった。

 「地域ごとに問題は違っていて、アフリカは命の問題だった。教育レベルが日本とは違うので、(検査について)声をかけたところで来ないんだよね。『命を大事にしなさい』と言っても、『何で?』で終わってしまう。正しい知識を持ってもらいたいけど、まず人を集めなければいけないからサッカーで」

 日本人の言葉や常識が通じない異国でも、サッカーという「共通言語」がパワーを発揮したという。

 「サッカーをやるためには、仲間を大事にしなければいけない。だから自分も大事にしなければいけない。そう言うとパッと理解していくんだよね。先生が生徒に伝える言い方では無理で、サッカーを利用して分かりやすく」

 2010年に開催されたW杯南アフリカ大会の期間中は、アフリカ西部のガーナにいた。アフリカではテレビの普及率が低く、自国代表が出場したW杯をテレビで観戦できない国民がほとんどだった。