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ミサイル攻撃で両親を失った10歳の少年、「どうやって生きていけば」 ウクライナ東部
ウクライナ東部ポクロフスクでロシア軍のミサイル攻撃を受け、両親を失った10歳の少年が、悲劇の瞬間を振り返る。
家族を失ったミコラ君は混乱と絶望の中で、助けを求めるも無残な現実に直面し、名付け親のもとで新たな生活を始める。
ウクライナ東部ではロシア軍の攻勢により多くの家族が犠牲になっており、現地の状況は深刻さを増している。
![ミサイル攻撃で両親を失った10歳の少年、「どうやって生きていけば」 ウクライナ東部](/img/article/20240528/665594359c1e8.jpg)
ウクライナ東部(CNN) ウクライナ東部ドネツク州ポクロフスクで自宅がロシア軍のミサイル攻撃を受け、両親を失った少年が、カメラの前で当時の状況を振り返った。「これからどうやって生きていけばいいのか」と、亡き両親に問い掛けた。
ミコラ・グルシュコ君(10)は最初、夢を見ているのかと思った。自宅の窓が吹き飛ばされ、弾頭が音を立てて飛来した後、爆発が起きた。
暗闇の中で母の部屋に向かいながら、夢ではないことをさとった。目の前に横たわった母は、コンクリート棒の下敷きになっていた。
何かが落ちてきた。自分の名前を呼ぶ母に、「ぼくは生きているよ」と答えた。
顔と目のほこりを必死に払うと、母は崩れ落ちた天井に押しつぶされていた。がれきをどけようとしたが無理だった。母がうめき声を上げ、両脚を震わせる。ミコラ君は「お母さん、ただの夢だよ。恐ろしい夢だ」と叫んでいた。数日前にこんな悪夢を見たばかりだった。
母はミコラ君の目の前で息を引き取った。父は最初の爆発で死亡した。その数時間前、父は家族のバーベキューでビールに酔い、軍への入隊について熱く語っていた。
真っ暗闇の中で外へはい出すと、家が破壊されて変わり果てた姿になり、門は跡形もなかった。ミコラ君は「神様、どうしてぼくにこんな仕打ちを」と叫びながら、下着姿のまま助けを求めて走った。
ウクライナではこの2年間、民間施設にロシアのミサイルが撃ち込まれ、名もない人々の命が奪われてきた。子どもたちの生活が破壊され、何十年も先まで消えない傷跡を残している。
ミコラ君は病院で鎮静剤を投与された。兄がやって来て状況を説明し、残されたのは兄弟2人きりだと、4度繰り返した。ミコラ君は落ち着こうと努めつつ、母を助けられなかった自分を責めた。
ミコラ君は、近くに住む名付け親の女性に引き取られることになった。この街にとどまって、両親の墓を守るつもりだ。墓の前で「助けられなかったことを謝る。母を助けられなくてごめんなさいと、父に謝る」という。
今の夢は、両親に「これからどうしたらいいか、どうやって生きていけばいいのか」と尋ねること。そして、ミサイルを発射した相手に復讐(ふくしゅう)することだと話す。
ロシア軍は最近、ポクロフスク周辺をはじめとするウクライナ東部の前線で攻勢を強め、多くの家族が犠牲になっている。ミコラ君の家の跡で、近所の住人らは「このあたりに軍の施設はないのに」と指摘した。がれきの片付け作業が進む現場に、飼い犬の死骸の腐敗臭が漂う。ラジオにはロシア局の電波が入り、「欧米がウクライナに近代的な装備の供給を拒否しているせいで、ウクライナ軍の若者たちが犠牲を強いられている」と報じる声が流れた。
近くの街に設置された前線の応急救護所には、ロシア軍のドローン(無人機)攻撃を避けて、夜の間に負傷者が運び込まれる。
最近ロシア軍に掌握された同州バフムート近郊のクリシュチウカから、兵士2人が搬送された。1人は頭に包帯を巻かれて手探りで歩き、もう1人はストレッチャーに横たわっている。塹壕(ざんごう)からわずか1.2メートルの場所に、迫撃砲が着弾したという。衝撃で内臓が損傷している恐れもある。
2人の周りには、4つのベッドが空いていた。医師の1人によれば、ロシア軍によるバフムート攻撃がピークに達していた1年前は、1日に250人の患者が運ばれることもあった。
当局者の話によると、応急救護所の患者数が減ったのは戦況が好転したからではなく、前線に十分な兵力を配置するのが難しくなっているからだという。
待機していた救急車が兵士らを乗せ、暗闇の中でヘッドライトを消したまま出発した。ロシア軍のこれまでの攻撃では、医療機関も標的になっている。