「見てほしいものがある」…ウクライナの被爆地でロシア人女性がイラク従軍兵の男に見せられた「衝撃的なモノ」とは

AI要約

ウクライナ戦争勃発後、ロシア人女性が反戦ポスターを掲げて政府系テレビ局に乱入し、追い詰められる物語。

ニュースディレクターが政府プロパガンダに加担してきた過去と、抗議行動に走った理由。

戦禍が及んだアパートの悲劇と、生き残った人々の哀しみと希望が交差する瞬間。

「見てほしいものがある」…ウクライナの被爆地でロシア人女性がイラク従軍兵の男に見せられた「衝撃的なモノ」とは

 「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。

 ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。

 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。

 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第19回

 『「空襲警報」が目覚まし代わり…飢えた野犬が地雷原をうろつくウクライナの「世紀末的な日常」』より続く

 クルマに乗り、破壊されたアパートへ行った。そこは復活祭の前に攻撃された。父親がパンを買いに出て、戻った時には、部屋があったところに黒々とした穴が開いていたという。妻と3ヵ月の娘とおばあさんが死んだ。

 アパートのまわりでは掘削機の音がしていた。建物の一部が損傷しただけだったので、ロシア軍の空爆で壊れた天井を、建設作業チームが復旧していた。一番端の入口からベビーカーを押しながら若い女性が出てきた。彼女はわたしの質問に答えてくれた。

 「もちろん怖いけど、行くところがないんです」女性は言った。「わたしの部屋は別の階にあって残ったんですけど、爆撃の時に壁が揺れて天井から漆喰が落ちてきました。親戚がみんな電話をかけてきて、大丈夫かとききました。キーラという女の子が死にました。わたしの娘と同い歳でした。よく一緒に散歩したんです」

 女性はベビーカーに身をかがめ、ピンク色の毛布を整えた。赤ちゃんは、セルゲイの持っている小さなビデオカメラを好奇心いっぱいに見ていた。