日韓との経済協力重視を鮮明にした中国首相 経済成長の鈍化で対中投資拡大急ぐ

AI要約

日中韓首脳会談で日中韓自由貿易協定の締結に向けた経済協力が打ち出された。中国は経済成長の鈍化に直面しており、外資の対中投資拡大を急いでいる。

中国首相は外資企業の重要性を強調し、日韓両国との経済協力を重視する姿勢を示した。日中韓FTA交渉のリスタートが強調され、科学技術やデジタル経済分野での協力が訴えられた。

日中間の経済関係が低迷している現状や、中国政府の姿勢により、日本企業の対中投資の展望は不透明である。

【ソウル=三塚聖平】27日に開かれた日中韓首脳会談では「日中韓自由貿易協定(FTA)」の締結に向けた交渉の加速で合意するなど経済協力が打ち出された。中国は経済成長の鈍化に直面する中、外資の対中投資拡大を急いでおり、李強首相は日韓両国との経済協力を重視する姿勢を鮮明にした。

「中日韓FTA交渉のリスタートを推し進める」。李氏は27日、首脳会談後の共同記者発表でこう強調した。日中韓FTAは中国がこだわったテーマだ。

李氏は26日にはソウルでサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長と会談。「外資企業は中国の発展に欠かせない重要な力だ。中国の大市場は常に外資系企業に開かれている」と呼び掛けた。同日の岸田文雄首相との会談でも「中日両国が経済の相互補完で持つ優位性は今後も続く」と述べ、科学技術の革新やデジタル経済などで協力を訴えた。

中国経済は、「ゼロコロナ」政策の後遺症や不動産不況の長期化が直撃して回復が鈍い。李氏は一連の会談を通じ、投資を呼び込んで経済回復につなげることに力を注いだ。日本政府関係者は「足元で中国政府の態度は明らかに変わった。諸懸案について少なくとも話はできるようになっている」と指摘する。

経団連と中国の経済団体、中国国際貿易促進委員会、韓国の大韓商工会議所は27日、首脳会談に合わせてソウルで「日中韓ビジネスサミット」を開催。民間部門の経済協力に関する共同研究などを行うワーキンググループの設立で一致した。

ただ、外資企業は対中投資に慎重になっており、日韓両国の対中貿易も低迷している。中国税関総署によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は2023年に韓国とが前年比13・5%減、日本とが10・7%減だった。

日中の経済関係を巡っては、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受けた日本産水産物の輸入停止や、中国で相次ぐ邦人拘束が影を落とす。中国政府は国家安全を最重視する姿勢を崩さず、日本企業が求める邦人の短期滞在の査証(ビザ)免除措置再開にも応じていない。中国政府が望むように日本企業の対中投資が上向くかは見通せない部分がある。