退職代行によって日本の若者は企業に「抵抗する手段」を手に入れた─英紙が指摘

AI要約

日本で活況を呈する退職代行サービスに英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が注目。アホウドリのマスコット「モームリくん」やサービスを提供する企業について紹介。

退職代行サービスは、従業員の不満を暴き、彼らに「転職の免罪符」を提供することで企業に変化を促している。投資家よりも退職する社員が影響力を持つ状況。

業界はコロナ禍前から拡大し、利用者は新卒社員も多い。労働市場は売り手優位で、退職しても次の仕事が見つかると考えられている。

退職代行によって日本の若者は企業に「抵抗する手段」を手に入れた─英紙が指摘

日本で活況を呈する退職代行サービスに英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が注目。日本企業は辞めていく若者たちを非難するのではなく、魅力的な職場を作るための努力をするべきだと主張する。

デフレ、バランスシート不況(不況下で企業が設備投資より負債を減らすことを優先した結果、金融緩和による景気刺激が弱まる状態)、自然災害、中国の台頭──日本企業は、こうした数々の問題に翻弄されながらも、何とか持ち応えてきた。

だが、蝶ネクタイに中折れ帽をかぶったアホウドリの破壊的な揺さぶりに対する備えは、できているだろうか? 

この厄介なアホウドリは、退職代行サービスのマスコットで「モームリくん」と呼ばれる。

同サービスを運営するのは、業界大手のアルバトロス社(アホウドリの英名)だ。会社を辞めることを思いとどまっていた人たちの懸念材料を一掃する退職代行は、いまやシンプルだが実入りのよいビジネスになっている。

さらにこうしたサービスを担う企業や弁護士事務所は、利用者をエンパワーメントするのに一役買っている。その結果、思いもよらないアクティビズム(行動主義)の波が、日本企業に押し寄せている。

退職代行サービスは、これまでうやむやにされてきた従業員の不満を暴き、彼らに「転職の免罪符」を販売した。これにより企業はもはや、従業員の声を無視できなくなっている。

投資家は、自分たちこそ日本企業に変化を促すことができると考えているようだが、現時点でもっとも大きな影響力を行使しているのは、辞めていく社員だ。

退職代行サービスはコロナ禍以前からあったが、ここ数年で急成長している。雇用主との感情的な対立、人間関係の気まずさ、煩雑な事務手続き──そうしたものから解放されるなら、1万1000~2万7000円の代金は惜しくないと、利用者は考えている。

業界大手は4月だけで1500件以上、中小は数百件の依頼を処理した。うち数社は本紙「フィナンシャル・タイムズ」に対し、前年比3倍のペースで成長していると語っている。ここで重要なのは、利用者の多くが叩き上げのベテラン社員ではなく、新卒社員であることだ。

こうしたサービスは、いまや退職を手助けするというより、促進している。昨今の労働市場は売り手優位で、辞めていく社員も次の仕事はすぐに見つかると考えている。これから退職を促すより大胆なサービスが誕生するかもしれない。