「退職代行で辞めた人」に熱視線。代行業者が転職支援「うちに紹介して」人手不足企業から声多数

AI要約

退職代行サービスの利用が増えており、乱立する退職代行事業者の中で差別化が困難な状況。

一部の企業は退職代行を利用した人材に興味を持ち、転職支援サービスも展開。

人手不足の業界からの期待も高く、特定の専門職の人材を紹介する要望もある。

「退職代行で辞めた人」に熱視線。代行業者が転職支援「うちに紹介して」人手不足企業から声多数

本人に代わり、勤務先に退職の意向を伝える「退職代行サービス」。

数万円の費用でスムーズに退職できることから、上司の引き止めやパワハラなどで退職できない人や、短期離職で言い出しにくいという人らを中心に利用が広がっているという。

サービスが広く知られるようになった一方、その参入のしやすさから退職代行事業者は乱立している。ある事業者は「個人も含めて、20~30社は増えた印象」と話す。

退職代行そのものはシンプルなサービスゆえに差別化が難しい。こうした中、退職者のその後の転職まで支援する企業も出てきた。

「退職代行を使って辞めた人材」は企業に敬遠されそうだが、実は、人手不足の業界を中心に「採用したい」というラブコールがあるという。

アルバトロスが手掛ける「退職代行モームリ」は今、月間1000人以上の退職を支援している。

サービス開始は2022年3月と事業者の中では後発での参入。初月の依頼は25件だったが、正社員の退職代行で2万2000円(税込)と業界では安価な価格設定に加え、弁護士の監修や労働組合との提携などを強みに依頼件数を伸ばしている。

依頼件数の増加につれ、退職代行を利用された企業のデータも増えた。そこで2023年11月、「退職代行を利用された企業は紹介しない」をうたった転職支援サービスを開始した。

アルバトロスの谷本慎二代表は

「退職をした後は転職がついて回る。 転職まで同じ担当者が対応すれば強みになると思いました。 退職代行で培ったデータを基に、ブラック企業には紹介しないことで求職者も安心できる」

と話す。

モームリの利用者データでは、利用者の勤続年数は半年未満が約7割を占める。退職代行を利用した理由の上位は「上司から退職を止められる」「ハラスメントを受けている」などで、「利用せざるを得なくなって利用される方がほとんど」(アルバトロス)というが、一度は短期離職をしている人材の採用に企業は及び腰にならないのか。

谷本代表は

「逆に『うちに紹介してほしい』と複数の企業から連絡をいただいています。人材不足の中、うちは退職者が月に1000人以上いるので『特定の専門職の人を紹介してほしい、協業しませんか』というお声は多い」

と話す。

協業を希望する企業は建築関係やIT関係など、人手不足が深刻な業界が多いという。

アルバトロスの人材紹介サービスは、退職代行の利用者以外も利用できる。既に転職者の実績があるが、2023年11月にサービスを開始したばかりなこともあり、2024年5月17日時点で離職者は出ていないという。