社内に蔓延るミソジニー、米GS元社員の女性が明かす「息苦しかった日々」

AI要約

ゴールドマン・サックスの元マネージング・ディレクターが暴露した、女性嫌悪と人種差別に満ちた職場の実態を明らかにする衝撃の回顧録。

同社で働く女性が固定観念やレッテルに押し込まれる現実と、その環境に適応しきれず挫折感を抱えるエピソード。

彼女が自己定義の機会を求める中で、ゴールドマンが勝手に付与した枠組みに疑問を抱く姿が描かれる。

社内に蔓延るミソジニー、米GS元社員の女性が明かす「息苦しかった日々」

 世界トップクラスの地位と報酬が約束されたゴールドマン・サックス。だがその実態は、金と女性に対するおそるべき強欲、嫉妬にまみれた職場だった――。

 同社の元マネージング・ディレクター(上位8%の幹部職)の女性が1998~2016年の在職期間に目撃した、ミソジニー(女性嫌悪)と人種差別にあふれる、堕ちた企業風土を明らかにする衝撃の暴露本『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』から、一部内容を抜粋してお届けする。

 巨額の退職金を捨てて、秘密保持契約書(NDA)へのサインを拒否。同社の内幕を告発する道を選んだ彼女の回顧録を読み進めるうちに明らかになる、金融資本主義の欺瞞と、その背後にある差別的な思考とは? 

 この1年、海外転勤になったソフィアとは連絡が途絶えていたが、ミシェルとは連絡を取りあっていた。ある晩、ミシェルと地元のバーで夕食をとりながら、職場での出来事などを話していた。「この仕事、想像してたのと違ってた」彼女がため息をついた。「私には合わない場所みたい」私たちはバーの隅にある薄暗い席に座っていた。テーブルに置いてあるキャンドルが、ミシェルの青い瞳と長いブロンドの髪を照らしている。

 「どういう意味?」“選ばれし人”の彼女がそんなふうに感じていることに驚いた。「型にはめられてるみたいな気がして。同じ部署の男どもは私のことをコンパニオンか何かだと思ってる。ブロンドでおつむの弱いコネ入社の女、ってね。私にはほかに何も取り柄がないみたいに。まともに相手もしてくれないし、難しい仕事もさせてもらえない。だから、ほとんど何も学べてない」

 悲しそうな彼女の目を見て、私は顔を曇らせた。また、レッテルのことが頭をよぎった。ここにいるのは“シスター・ジェイミー”と“おつむの弱いミシェル”。なんて画一的な定義なのだろう。決まった役割に人を押しこめる、ほとんど根拠のないレッテル。私はメリッサと話したときのことを思い出した。ゴールドマンにいる女性のほとんどは、こうして押しつけられた役割が不愉快でたまらないはずだ。

 「だから、大学院に戻ろうかと思ってる」ミシェルが打ち明けてくれた。「自分を定義しなおすためにね」

 でも、そんなふうにミシェルを定義したのは彼女自身ではない。ゴールドマンが勝手に定義しただけだ。