バイデン米大統領、クアッド制度化狙い「くさび」 「もしトラ」に備え

AI要約

バイデン大統領はクアッド首脳会合で長期的な継続をアピールし、中国への対抗を図る。

バイデン政権のクアッドの制度化を目指す一方、トランプ氏の影響も懸念される。

バイデン氏は日本との連携を強化し、新興国への支援も進めるが、外交方針の転換は慎重に検討すべき。

【ウィルミントン(東部デラウェア州)=坂本一之】来年1月に退任するバイデン米大統領は21日、日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合で、同枠組みの長期的な継続に向けていくつもの「くさび」を打ち込んだ。クアッドをバイデン政権のレガシー(遺産)とするだけでなく、11月の大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利する場合にも備え、枠組みの制度化を狙う。

バイデン氏は会合の冒頭、「4カ国はかつてないほど戦略的に連携している」と語り、日米豪印の協力枠組みが機能しているとアピールした。

バイデン氏は大統領に就任した2021年、外相レベルだったクアッド会合を首脳レベルに引き上げた。距離のあるインドを引き込むとともに、インド太平洋地域で覇権主義的行動を強める中国への対抗を図った。

4カ国の協力は海洋安全保障やサイバーセキュリティー、がん対策など多岐にわたる。バイデン氏が重視する多国間連携の象徴の一つとなった。

しかし、トランプ氏はバイデン政権が主導した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を破棄すると主張している。バイデン政権のレガシーとなるクアッドが骨抜きになる可能性も排除できない。

共同声明には海上保安機関の連携など来年以降の協力案件を複数盛り込み、米主催の外相会合とインド主催の首脳会合の25年開催も明記した。

さらに米議員有志が首脳会合の前日に超党派で「クアッド議連」を設立した。次期政権への働きかけでホワイトハウスが議会側と連携したことは想像に難くない。クアッドなどの制度化はバイデン政権の大きな課題だ。

バイデン氏は岸田文雄首相と連携し、日米韓や日米比の首脳会談などを立ち上げ、インド太平洋地域に「格子状」の連携網を構築。連携網を生かし同盟国ではない友好国などへの支援や協力を強化してきた。

その連携網が米側の政権交代で機能不全となれば、米国への信頼が揺らぐことになる。中国やロシアと米国の間で板挟みになることを嫌う新興・途上国も多い。米国の政権交代による外交方針の大転換は、中露を利することにもなりかねない。