バイデン外交、実績アピール ちらつくトランプ氏の影 クアッド首脳会議

AI要約

バイデン大統領が退任に向けてクアッド首脳会議を開催し、外交成果に注目が集まる中、トランプ前大統領の影もちらついた。

会議ではインド太平洋地域での協力強化が合意され、中国への対抗姿勢もにじんだ。

バイデン大統領はクアッドの重要性を強調し、退任後も連携が続くことを表明したが、モディ首相はトランプ氏との会談に備える姿勢を見せた。

 【ウィルミントン時事】来年1月に退任するバイデン米大統領は21日、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の首脳会議を開き、各国首脳を自身の地元に招いて厚遇した。

 クアッドの連携強化を「レガシー(政治的遺産)」の一つと位置付け、アピールした形だが、外交成果に花を飾るはずの舞台でもトランプ前大統領の影がちらついた。

 「私の家に来て、育った場所を見せることができて光栄だ」。米東部デラウェア州ウィルミントン近郊にある母校で開かれた首脳会議冒頭、バイデン氏は各国首脳にこう語り掛けた。

 バイデン氏は会議に先立ち、3カ国首脳をウィルミントンの私邸に招き、個別に会談。オーストラリアのアルバニージー首相とスーツの上着を脱いでくつろいで談笑する姿や岸田文雄首相と池に面するバルコニーで話す様子の写真をSNSで公開し、親密さを印象付けた。

 11月の米大統領選からの撤退に追い込まれたバイデン氏は、退任が迫る中、レガシーづくりを急ぐが、残された時間でアピールできそうな材料は限られている。本来はインドで開くはずだったクアッド首脳会議を急きょ国連総会のタイミングに合わせた地元開催へとこぎ着け、舞台を整えた。

 中国を「唯一の競争相手」と見なして対抗してきたバイデン政権にとって、非同盟を貫きつつも、民主主義国であるインドとの協力を推進するクアッドは戦略的に重要な枠組みだ。インドのモディ首相は会議で「短期間であらゆる分野で協力を強化してきた」と述べ、去りゆくバイデン氏のリーダーシップを称賛してみせた。

 日米豪印首脳は、インド太平洋地域で違法漁船を監視する「海洋状況把握(MDA)」の取り組みを来年以降も強化することなどで合意。念頭にあるのは南シナ海で危険な行動を繰り返す中国だが、「2025年に」という文言に国際協調を軽視するトランプ氏が返り咲くことも想定し、クアッド連携の「制度化」を進めておく思惑がにじむ。

 バイデン氏は会議で「試練が来て、世界も変わるだろうが、クアッドは続くと信じている」と強調した。それでも、モディ氏は今回の訪米中、トランプ氏と会談する見通しで、同氏の再選に備えて布石を打つ構えだ。