米紙が震災後に「地熱発電で町おこし」をする福島県土湯温泉に注目─日本人は温泉の“治癒力”を信じている

AI要約

福島県・土湯温泉が地熱発電所の建設によって再生エネルギー開発を進めている。日本の温泉文化とクリーンエネルギーの共存を模索している。

日本は地熱資源に恵まれているが、地熱発電の普及が遅れている。温泉産業との調和を模索しながら進められている。

温泉文化を保護しながらも、新たなクリーンエネルギーの普及を推進することが課題となっている。

米紙が震災後に「地熱発電で町おこし」をする福島県土湯温泉に注目─日本人は温泉の“治癒力”を信じている

地熱発電に絶好の条件がそろっていながら普及が進まない日本で、いち早くその取り組みを始めたのが福島県・土湯温泉だ。米紙「ワシントン・ポスト」が同地を訪ね、震災後に客足が途絶えた温泉地を再生エネルギー開発によって復興しようとする住民の思いを取材した。

福島県福島市の近郊にある土湯温泉は、1400年前に開湯して以来、多くの旅人たちを魅了してきた。

長大な火山帯・吾妻連峰の山懐に抱かれた土湯温泉町の住民は、数百年にわたり、この地を訪れる旅行客をもてなし、土産物などを売って生活している。

だが9年前、国内の他の温泉地が二の足を踏む事業に同町はあえて乗り出した。貴重な温泉を再生可能エネルギー源に転用する、地熱発電所の建設だ。

土湯温泉は日本の温泉文化を守りながら、豊富なクリーンエネルギー源を活用する事業の先駆者となっている。

日本は世界第3位の地熱資源に恵まれた国だが、電力の大部分を化石燃料に依存する。専門家によると、地熱発電を推進すれば、日本の電力の10%を供給できる可能性がある。日本政府は地熱発電の割合を、2030年までに現状の0.3%から1%へ引き上げることを目指す。

この取り組みの最大の障壁が、温泉産業だ。日本に3000ヵ所ほどある温泉は、この国の文化と観光業の屋台骨でもある。公共温泉施設や旅館の経営者らは、地熱発電開発によって温泉の源泉が損なわれ、業界が打撃を受けるのではないかと懸念する。

それでも土湯温泉の住民は、発電所と温泉が共存できる道があると考えている。

土湯温泉にある老舗旅館「山水荘」の当主である渡邉利生(りお)は言う。

「日本の温泉文化を守ることは非常に重要です。温泉は日本になくてはならないアイデンティティのひとつのようなもので、絶対に守らなければなりません。しかし同時に、クリーンエネルギーの普及は日本にとって喫緊の課題です。日本文化の新しいアイデンティティをどう創り出すか、考えていかなければなりません」