自称「自由の戦士」 トランプ氏を狙った容疑者の実像は

AI要約

ライアン・ウェズリー・ラウス容疑者は、元大統領トランプを狙撃したとして逮捕された。SNS上で自由の戦士を自称し、政治的な発言を繰り返していたが、その実像は異なっていた。

ウクライナへの武器供給や戦闘への参加を求める発言をしたが、実際にはウクライナ軍に参加することはなかった。ハワイで小規模住宅の建設業を営んでいた実態が明らかになっている。

過去には犯罪の歴史があり、ハワイではホームレス問題に取り組んでいた。ホノルル市長選に出馬を意識していたことも報じられている。

自称「自由の戦士」 トランプ氏を狙った容疑者の実像は

(CNN) 米フロリダ州のゴルフ場でトランプ前大統領を銃で狙ったとして拘束されたライアン・ウェズリー・ラウス容疑者(58)はSNS上で、世界をめぐる「自由の戦士」を自称していた。しかし実像とは大きなギャップがあったようだ。

ラウス容疑者はかつてニュースメディアに、ウクライナで数カ月間、アフガニスタンから兵士を呼び込む仕事をしたと話していた。ツイッターではバイデン米大統領にウクライナへの武器供給を求め、同国のゼレンスキー大統領に対して軍事戦略の助言を書き込んでいた。

だが昨年のインタビューでは、計画がうまくいかず、アフガン兵のビザ取得に成功した例はひとつもないことを認めていた。

現実のラウス容疑者はハワイ州ホノルル近郊で、細々と小規模住宅の建設業を営んでいた。

ツイッターに登録したのは2020年1月。すぐに政治に関する投稿を始めた。16年大統領選ではトランプ氏を支持したが、「ひどく失望」したと書き込み、トランプ氏が「どんどん悪くなっている」と批判。同氏のスローガンを「米国人を再び奴隷に」とするべきだと主張した。

ある時は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記宛てに「ハワイへの旅に招待したい」「私はここのリーダーで、旅行をすべて手配できる」とツイートした。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった22年2月には何十回も書き込みを繰り返し、「私はウクライナへ行って戦い、死ぬ覚悟がある」とも書いていた。ゼレンスキー氏に直接、「米国から駆けつけて共に戦うつもりだ」と語り掛け、返信を求めたこともある。

22年4月には実際にウクライナ入りしていた。だがウクライナ陸軍司令部の外国人部隊担当者はCNNに、同容疑者からオンラインで何度かメッセージを受け取ったことを確認したうえで、その文面は「妄想」にすぎなかったと指摘。返信すべき内容ではなく、本人が部隊に参加した事実もないと述べた。

22年にウクライナでラウス容疑者にインタビューしたというジャーナリストによると、同容疑者は入隊を拒否された後、首都キーウに外国人戦死者の追悼場所を設け、毎日通っていた。同ジャーナリストは「話していると、明らかに普通の人ではなかった。熱狂的という表現が合っているかもしれない。とにかく思い込みが非常に激しかった」と振り返る。

外国人部隊に参加していたというある米国人は、同容疑者に正式な手続きを経るよう何度も勧めたが、本人は耳を貸さなかったと話した。

ラウス容疑者は昨年、「ウクライナの勝てない戦争」と題した本を書いたとみられ、電子版を2ドル99セント(現在のレートで約420円)で売り出していた。この本の中でトランプ氏を「愚か者」などと非難し、かつて支持したことを「判断ミスで大間違い」だったと認めている。

出身地のノースカロライナ州では、25歳だった1991年、強姦(ごうかん)犯を取り押さえたとしてニュースになっていた。ところがその後、02年に機関銃を持って店舗に立てこもり、重罪容疑で逮捕されたほか、薬物や盗難車両に絡む軽罪に問われ、金銭トラブルで何度か訴えられた記録がある。

ハワイに移り住んでからはホームレスの問題に取り組んで地元紙に取り上げられたり、編集部に書いた手紙が掲載されたりした。今年のホノルル市長選では、一時期出馬に意欲を示していた。