ロシアが反攻開始、クルスク州からウクライナ軍排除へ ただし勢い欠く

AI要約

ロシア軍がクルスク州の領土奪還のため反転攻勢を試みているが、勢いは乏しい。ウクライナ軍は激しい戦いを続けており、ロシアの反攻に対処している。

ロシア軍の行動が流動的で、兵力や質についての情報が不透明。ウクライナ軍はクルスク州での戦いを維持し続け、新たな攻撃ルートも模索中。

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの進軍を阻止し、ドネツク州への脅威を回避するために努力している。

ロシアが反攻開始、クルスク州からウクライナ軍排除へ ただし勢い欠く

(CNN) ロシア軍が、ウクライナ軍の越境奇襲攻撃で奪われた南西部クルスク州の領土の奪還を目指し、反転攻勢に乗り出している。ただ、これまでのところ勢いは乏しい。

ウクライナは先月に攻撃を開始して多数の集落を奪取し、ウクライナの支援国をも驚かせた。ただ、当初から観測筋の間では、ウクライナが戦果を維持できる可能性は低いとの声が出ていた。

位置情報が確認された動画では、ロシア軍が複数の村を奪還したこと示されているものの、状況は流動的だ。クルスク州に投入されたロシアの兵力は質量ともに不透明で、信頼できる前線の証言も乏しい。

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの反攻が始まったことを認め、ロシアはクルスク州に6万~7万人の兵士を投入する意向だと指摘している。ただ、13日の発言では、ロシア側に「今のところ本格的な戦果は出ていない。我々の英雄的な兵士が持ちこたえている」との見方も示した。

米国の分析によると、ロシアがクルスク州からウクライナ軍を排除するには最大で20個旅団、兵員約5万人が必要となる。しかし、米国防総省のライダー報道官は12日、現時点でロシアの行動は「ごくわずか」だと指摘。アナリストはこれまでのところ、規模ではるかに劣るウクライナ軍を直ちに駆逐するほどの兵力や質は目にしていない。

ロシアの反攻には精鋭部隊も加わっている様子で、位置情報が確認された動画には、精鋭の第51空挺(くうてい)連隊が12日の攻撃に関与する様子が映っている。ただし米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、クルスクにいるロシア軍のうち「戦闘経験のある部隊で構成されている」ものはほとんどないとの分析を示す。

初期情報から判断すると、ロシア軍は大規模な反攻作戦に着手する前に、クルスク州の町コレネボ付近で、ウクライナ軍の寸断を試みる可能性もある。

クルスクでの作戦に参加しているウクライナ軍将校は13日、CNNの取材に、ロシアはウクライナが先月奪取した地域の西端に位置する約2キロの範囲を制圧したと明かした。ロシアの軍事ブロガーも同様の分析を示している。

クルスク州の村でロシア国旗や、民間軍事会社ワグネルの旗が掲揚される様子を捉えた動画も浮上した。ただ、この将校によると、現地の状況は既に安定しており、付近の別の村で激しい戦闘が行われているという。

ウクライナ軍がクルスク州の別の場所、ベセロエ近郊へ向かう新たな攻撃ルートを開拓中である可能性を示す兆候もある。ロシア軍の注意をそらす意図なのかもしれない。

クルスク州でロシアの反攻が進み、ウクライナ側の損失が増えている状況だが、ウクライナのゼレンスキー大統領はクルスク侵攻の必要性と重要性を強調。これにより、ポクロウシクへの脅威が迫る東部ドネツク州でロシアの進軍が鈍っていると主張した。ロシアのプーチン大統領は部分的に支配下にあるウクライナ東部4州の完全奪取を目指しており、戦闘の大半はこの地域に集中している。

ゼレンスキー氏は13日、CNNのファリード・ザカリア記者が司会を務めた首都キーウでの会合で、ポクロウシクにおけるロシアの砲弾の優位性が12対1から2.5対1に低下したと明らかにし、クルスクでの軍事作戦の成功が要因だとの認識を示した。

「クルスク作戦の以前、ドネツク区域での(ロシアの進軍)スピードはさらに早かった。ドネツク(区域)だけでなく、東部全体を見てもそうだった」(ゼレンスキー氏)

ロシアの勢いは9月第1週には鈍ったものの、主要部隊が撤退してクルスク州へ転戦した様子はない。ただ、一部の部隊は1000キロに及ぶ前線の比較的落ち着いた地域から再配置された。ロシア政府は今のところ、ロシア国内の失われた領土の奪還よりも、ドネツク州で進軍するという目標を優先しているとみられる。

ウクライナはクルスクでの軍事作戦について、▽現在ウクライナの前線に投入されている部隊の移動をロシアに強いる▽交渉で交換材料にする土地を手にする▽プーチン氏が引いた「レッドライン(越えてはならない一線)」を意に介さない姿勢を示す▽捕虜交換に使う戦争捕虜を得る――といった理由を挙げている。

ゼレンスキー氏は、クルスクでの作戦は紛争激化に関するプーチン氏の警告の空疎さを示したとも主張している。

さらに今回、クルスク侵攻を正当化する新たな理由を付け加え、ウクライナ北部の広い範囲を緩衝地帯として奪取するというプーチン氏の計画を阻止したと主張。この計画が実行されていれば、「地域の中心」がのみ込まれていたとの見方を示した。

ゼレンスキー氏がキーウでの会合で語ったところによれば、「パートナーからの情報」では、ロシアがウクライナ国内の奥深くに「安全地帯」を設ける意向であることが示されているという。

ISWによれば、ロシア軍はウクライナ軍の戦力を広く分散させるため、ウクライナ北東部の前線で、より幅広くより継続的に追加の軍事作戦を実施する可能性がある。