「不確実性」高まる北極 中ロ、現時点で利害一致 米国防総省高官の一問一答 第1部「二つの北極」(2)〔66°33′N 北極が教えるみらい〕

AI要約

北極の安全保障環境は、気候変動やロシアの活動などにより不安定である。最近のロシアのウクライナ侵攻もこの状況をさらに複雑化させている。

ロシアは北極で軍事力を拡大しており、中国との連携も進めている。中ロ関係は相互不信があるものの、現時点では利害が一致している。

米国は北極での平和と安定を目指し、砕氷船などの能力強化に重点を置いている。

「不確実性」高まる北極 中ロ、現時点で利害一致 米国防総省高官の一問一答 第1部「二つの北極」(2)〔66°33′N 北極が教えるみらい〕

 米国防総省が7月に公表した「北極戦略2024」策定で中心的役割を担った同省のグレッグ・ポロック筆頭部長(北極・グローバルレジリエンス担当)は8月30日までに、オンラインで時事通信の取材に応じ、北極の現状について「不確実性が高まっている」との見方を示した。

 一問一答は以下の通り。

 ―北極の安全保障環境をどう見るか。

 最初に思い浮かぶのは「不安定」という言葉だ。気候変動、ロシアのウクライナ侵攻、フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟で、安保環境は急速に変化している。

 ウクライナ侵攻の結果、ロシアとの関係が悪化し、科学研究分野で交流することさえも不可能になった。中国は北極でロシアと連携して活動を活発化させており、北極の安定に対するリスクが高まっている。今回、北極戦略を更新したのは、急変する戦略的環境に備える必要があったからだ。

 ―ロシアは北極で最大の軍事力を持っている。

 ロシアが北極沿岸で基地や飛行場の近代化を進め、軍事化を進めているのは懸念すべきだ。ウクライナで地上部隊を大きく消耗しながらも北極への投資を続けている。ウクライナで戦争を続けるために、北極での経済活動から生み出される資金を必要としている。

 ―中ロの連携をどう見るか。

 ロシアは国際的に孤立していないと示すためにまず中国、そして北朝鮮に目を向けた。ただ、モスクワと北京の間には大きな不信感がある。中国は北極において、南極大陸と同じような統治の国際化を目指しているが、ロシアが軍事・経済両面で重視する北極について、中国と同じ考えを抱いているとは思えない。

 ―今後も協力関係は続くのか。

 中ロの歴史的な相互不信は今後も続くだろうが、現時点では両国の利害は一致している。ロシアは中国の経済支援を必要としており、中国はロシアのエネルギー資源を欲しがっている。

 ロシアは中国の政治・経済支援にますます依存するようになる。ロシアが戦略的に重視する北極に中国の進出を許していることは、ロシアの弱さを物語っている。両国がより深い関係を築く用意があるかはまだ分からず、注視している。

 ―米国の目標は。

 「北極戦略2024」で、米国は北極の平和と安定維持を目指すと宣言した。砕氷船は北極で活動する上で重要な能力だ。7月のNATO首脳会議で、カナダとフィンランドと砕氷船建造に関する協力協定を結んだことは重要な前進だ。適切な能力を確保するための投資を継続する。