米国のエコノミストが指摘「USスチールと日本製鉄の取引を阻止することが、米国経済のプラスになると考える経済学者を、私は知らない」

AI要約

日本製鉄が米国の大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画をバイデン大統領が正式に阻止することを発表する予定。

バイデンは取引が国家安全保障上の脅威であり、USスチールは完全な米国企業であり続けるべきだと強調。

USスチールの幹部は取引が失敗すれば同社の命運が危うくなると主張し、労働組合や米国内での反発が続いている。

米国のエコノミストが指摘「USスチールと日本製鉄の取引を阻止することが、米国経済のプラスになると考える経済学者を、私は知らない」

日本製鉄による米国の大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画を正式に阻止することを、バイデン大統領は発表する予定だ。また、米政府の外国投資委員会は両社に対し、買収には国家安全保障上のリスクがあるとする書簡を送っていたことがわかったと「ロイター通信」が報じている。

米メディア「NBC」によると、バイデンは今回の取引が「米国の製造能力に対する打撃であるだけでなく、国家安全保障上の脅威である」とし、次のように語っている。

「USスチールは1世紀以上にわたって米国を象徴してきた企業であり、完全な米国企業であり続けるべきだ。米国が所有し、米国の鉄鋼労働組合が運営する、世界最高の企業だ──そうあり続けることを、約束する」

これに関しては共和党も同じ意見で、大統領候補のドナルド・トランプも、自身が当選すれば「即座に」取引を阻止すると以前から表明している。

一方でUSスチールの幹部は、取引が失敗すれば、同社の命運が危うくなると主張している。デビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「選挙で選ばれた指導者らには、この取引の利点、そして取引が失敗した場合に避けられない結果を認識してもらいたい」と語っている。

両社の合意がなされた当初から、日本製鉄とUSスチールの取引には、鉄鋼業界の労働組合から非難の声が噴出していた。労働者の雇用への影響や安全保障の懸念を理由に、米国内では反発の声が多い。

また、11月におこなわれる大統領選挙の影響も大きい。USスチールが本社を置くペンシルベニア州は、いわゆる激戦州だ。労働組合や労働者の支持を獲得したい両党にとって、彼らの声は重要だ。

だが、そうした政治的な理由から企業の取引が阻止されることに、懸念をとなえる声もある。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、法律の専門家やウォール街のアナリスト、エコノミストたちは、バイデン大統領が行政権を行使して同盟国の企業との取引を阻止した場合、それが「前例となることは良くない」と指摘している。

「150億ドルの取引を頓挫させることは、開かれた投資という米国の文化から逸脱することになる。国際企業が米国への投資を考え直すきっかけになりかねない」と警告しているという。