司法制度改革案が審議入り、民主主義にとっての危機との批判も メキシコ

AI要約

メキシコのロペスオブラドール大統領は最高裁を批判し、司法制度全体の改革を進めようとしている。

議会は憲法改革案を審議し、国民が判事を選出する司法制度改革に対する懸念が高まっている。

改革は大統領の権限について議論を巻き起こし、国内外で大きな波紋を引き起こしている。

司法制度改革案が審議入り、民主主義にとっての危機との批判も メキシコ

(CNN) メキシコのロペスオブラドール大統領は自身が注力する政策提案の妨げとなっている同国の最高裁を長らく批判してきた。6年間の任期を今月終える同氏は司法制度全体を自分のやり方で作り直そうとしている。

議会は今週、包括的な憲法改革案をめぐる審議を開始した。法律の専門家らは、国民が選挙であらゆる管轄区域の判事を選出することになる司法制度改革案について、メキシコを国際的に孤立させると指摘している。

物議を醸しているこの法案は4日、圧倒的支持を得て下院を通過した。次は上院で採決が行われるが、上院はロペスオブラドール氏率いる与党連合が多数を占めているため、可決される可能性が高い。

左派として人気のロペスオブラドール氏はこの改革について、司法制度から腐敗をなくし、司法が確実に民意に応えられるようにするために必要なものだと述べている。一方で批判する人々はこの改革について、大統領の権力に対する最後の監視機能の一つを政治的影響力にさらす権力掌握行為だと評している。

改革への反対は大きな分断へと急速に発展。最高裁判事は今週、司法関係者による全国的な抗議活動に加わることを決議し、ほとんどの法的手続きを停止した。

米国のサラザール駐メキシコ大使が判事の選出を「メキシコの民主主義の機能に対する重大なリスク」とし、異例の批判を展開したことを受け、二国間関係に対立が生まれた。また、産業界はこの改革についてメキシコの投資環境を損なう可能性があると警鐘を鳴らし、通貨ペソの価値は急落した。

現在の法律では最高裁判事は大統領によって指名され、上院で承認される必要がある。連邦判事は司法委員会によって選出される。司法委員会は専門試験と学習課題から実力に基づいて候補者を評価している。

司法制度改革案が可決されれば、選挙活動期間を経て来年、司法選挙が行われる。約7000人の判事がその座をめぐって争うか、最も人気のある候補者に譲るかを迫られることになる。

司法職の候補者は応募書類を提出し、行政、立法、司法のそれぞれの評価委員会によって選挙に立候補するよう指名される。さらに最高裁判事の数は11人から9人に削減され、任期は15年から12年に短縮される。

改革案には政党から独立した司法選挙が明記されているが、最高裁の調査部門である憲法研究センターは今年初めに発表した分析で、判事の新しい選出手続きは司法における「公平性の概念を損なう」と結論付けた。

同センターは「司法職の候補者を指名する方法は、政治当局、政党、司法幹部に近い立場の候補者を優遇する」と指摘している。

判事の選出を国民投票に委ねる動きは、ロペスオブラドール氏の政治的影響力が増す中で始まった。6月の大統領選ではメキシコ市の前市長でロペスオブラドール氏の後継者であるクラウディア・シェインバウム氏が全投票のほぼ60%を獲得。圧倒的勝利で大統領に選出された。

10月1日に就任するシェインバウム氏は、改革によって与党「国家再生運動」(モレナ)に権力が集中するという見方に異議を唱えている。同氏は先週、判事候補の指名手続きについて三権が分担して実施する点を強調した。

また、改革支持者らは司法選挙の長期的モデルの例として米国を挙げる。しかし政治学の専門家によると、米国の39州では何らかの形で司法選挙が実施されているが、連邦判事は大統領が任命し、上院で承認されている。これほどの規模で判事を選出するとなれば、それはメキシコだけだという。

法律の専門家らによると、メキシコの改革を検討する上で最も近い基準は南米のボリビアだ。ボリビアは2011年に連邦判事を直接選挙で選出した最初の近代国家となった。

同国の改革は望んでいた成果の一部を達成した。15年に発表された論文によると、ボリビアの連邦裁判所は女性やマイノリティー(少数派)の判事が歴史的にみて多く、西半球で最も多様性のある憲法裁判所になった。

一方で世論調査では、改革が定着した後、最高裁に対する国民の信頼は低下したことが明らかになった。